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日外会誌. 94(6): 550-555, 1993


原著

反回神経麻痺に対する神経再建法の検討

香川医科大学 第二外科
隈病院 

宮内 昭 , 石川 浩 , 松坂 憲一 , 前田 昌純 , 松塚 文夫 , 平井 啓介 , 隈 寛二

(1992年1月27日受付)

I.内容要旨
切離された反回神経を縫合しても, 通常声帯の運動性は回復しないが, 声帯の緊張が保たれるため, 嗄声と発声持続時間が回復する.しかし, 実際には直接縫合できる場合は少なく, 放置されることが多い.そこで4つの反回神経再建法を試みた.
対象と方法:症例は甲状腺癌, 副甲状腺癌のため反回神経の合併切除を要した8症例, 再建方法は, 1)反回神経端々縫合, 2) 神経間置移植, 3) 迷走神経反回神経縫合, あるいは, 4) 頸神経ワナ反回神経縫合であり, 症例数はそれぞれ3, 3, 1, 1例である.これらの症例及び対照とした声帯麻痺のない甲状腺腫瘍の術前の患者81例, 術後の患者80例, および反回神経切除症例23例の最大発声持続時間を測定し比較検討した.
結果:声帯麻痺のない甲状腺腫瘍の術前の患者の最大発声持続時間の平均は男性21.5±8.6秒, 女性17.1±5.9秒であり, 反回神経温存群ではこれと有意の差はなく, 切除群では男性10.9±3.4秒, 女性6.4±2.6秒と著しく短縮していた(p<0. 001).これに対し, 再建群では男性36秒, 女性25.9±9.1秒と切除群に比べ有意に長く(p<0.001), しかもいずれの再建法でも良好な値を示し, かつ嗄声はほとんど回復した.
結論:反回神経再建法として, 反回神経端々縫合のみならず, 神経間置移植, 迷走神経反回神経縫合, 頸神経ワナ反回神経縫合のいずれの方法も嗄声と発声持続時間の回復に有効であった.

キーワード
反回神経麻痺, 神経再建法, 発声持続時間


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