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書誌情報]
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日外会誌. 94(4): 400-411, 1993
原著
剖検材料を用いた培養ヒト動脈内皮細胞の形態と生物学的特性
I.内容要旨成人動脈内皮細胞を生体より採取できる部位は限られて量も少ない事, 細胞が早期に老化を来たし易い事から, 培養は困難とされてきた.この成人内皮細胞の採取源として, 我々は, 剖検例の腸骨動脈より採取した成人動脈内皮細胞の培養を試み, 従来, ヒト起源の内皮細胞として研究に用いられてきたヒト臍帯静脈内皮細胞と比較し検討した.今まで, 剖検例より, これを多数, 系統的に培養した報告は無く, 安定的に, 成人内皮細胞を採取して培養し, それを種々の実験に用いるために, その成功率, 剖検例の諸条件の検討, 基本的なそれの性質を調べたものである.
対象として東京大学医学部病理学教室の剖検例の内, 無作意に選んだ72例の腸骨動脈を採取培養し, 初代培養でsub-monolayerになった例を培養成功例としたが, 結果として14例 (約20%) で成功し, 最長2ヵ月培養可能であった.剖検例の死後時間については, 3時間以内の培養例に有意に成功率が高く, 年齢については, 有意に成功群の方が不成功群より高く, 性には有意差がなかった.成功例はいずれも死後11時間以内に採取した例であった.これらを用いて, 1)位相差顕微鏡ならびに光学顕微鏡による観察, 2)成長曲線, 3)透過型電子顕微鏡による観察, 4)走査型電子顕微鏡による観察, 5)第VIII因子螢光抗体染色法, 6)増殖因子との関係, 7)Apoprotein Eの存在の実験が可能であった.
ヒト血管内皮細胞の研究や, 臨床応用を進める為には, 直接, これを培養し, 性質を調べる実験系が必要であり, 当研究は, 純粋に成人の血管内皮細胞のみを, 線維芽細胞や平滑筋細胞の混入無く培養し得て, 継代も可能であるので, その研究や応用に有意義と考えられた.
キーワード
成人動脈内皮細胞, 増殖因子, Apoprotein E, 成長曲線, 剖検材料
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