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日外会誌. 94(4): 366-375, 1993


原著

肝動脈再建を伴う Appleby 変法による肝動脈血流保全の有用性
-術後肝機能の推移を中心に-

1) 社会保険紀南綜合病院 外科
2) 社会保険紀南綜合病院 心臓血管外科

岩瀬 和裕1) , 竹中 博昭1) , 平中 俊行2) , 矢倉 明彦1) , 石坂 透1) , 高橋 元秀1) , 大嶋 仙哉1)

(1991年11月7日受付)

I.内容要旨
腹腔動脈と総肝動脈の切離断端を端々吻合し肝動脈を再建するAppleby変法により, 従来のAppleby手術において懸念されてきた固有肝動脈血流量低下に起因する合併症を回避し得るか否かを検討した. Appleby変法17例の術後肝機能の推移を, 2群リンパ節郭清を伴う胃全摘兼膵尾側牌合併切除術(比較対照群) 16例の術後肝機能と比較した.①術中, 術後を通じて抗凝固療法は一切施行しなかったが, Appleby変法17例全例において血管吻合終了後は固有肝動脈の拍動を良好に触知し, 電磁流量計で測定した血管吻合後の総肝動脈血流量は396±101ml/minであった.術後1ヵ月目の腹腔動脈造影における血管吻合部の開存性は, 在院死亡の1例を除く16例全例において良好であった.②術前, 術後1, 3日目, 1, 2, 3, 4週間目の, 血中GOT, GPT, 総ビリルビン, アルカリフォスファターゼ値は, あらゆる時点においてAppleby変法群と比較対照群の間に有意な差は認められなかった. Appleby変法群においては, 血中GOT, GPT値が250IU/Lを越えた症例は1例もなく, 17例中13例は100IU/L以下で推移した.③ Appleby変法群における術前のIndocianin green 0.5mg/kg静注15分後の血中停滞率 (ICG-R15) は4±1%であり, 術後1カ月目のICG-R15は6±3%であった.
以上より, 肝動脈再建を伴うAppleby変法により, 術前あるいは術中に胃十二指腸動脈を介する逆行性血流量を検索する必要なく安全にAppleby手術に準じる隔清が可能になると考えられた.

キーワード
Appleby 手術, Appleby 変法, 肝動脈再建, 肝機能, 胃癌根治手術


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