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日外会誌. 94(3): 234-241, 1993


原著

ラット Kupffer 細胞及び hepatocyte の刺激の相違によるロイコトリエン産生能の変化

日本医科大学 救急医学教室
*) 日本医科大学 第2生化学教室

大友 康裕 , 神田 佳和*) , 吉野 芳夫*) , 大塚 敏文

(1991年10月5日受付)

I.内容要旨
販血症・エンドトキシン(Etx)血症時の肝障害にロイコトリエン(LTs)が関与しているという報告が最近散見される.我々はこれまで, LTsの産生誘導がレチノール (ビタミンA) (A)の投与により抑制され, 同時に組織傷害も抑制することをin vivo及び肝組織切片での実験にて認め, 報告してきた.今回ラットのKupffer細胞及びhepatocyteを用いて, そのLTs産生能の刺激による特異性とAに対する反応性の違いに関して検討し, Etxによる肝障害発生のメカニズムについて考察した.方法:hepatocyteとKupffer細胞は, 肝灌流後に得た細胞を, percoll密度勾配遠心法で分離した.これを10-8M のA と共に15 分間プレインキュベーションした後に, Etx•Ca- イオノフォアー・アラキドン酸・リノール酸にて刺激し, 培養液中に産生されたLTC4/D4/E4及びLTB4をラジオイムノアッセイ法にて測定した.結果及び考察: Etx刺激によるKupffer細胞のLTs産生増加は著しく(LTC4/D4/E4 ;228±50pg/105cells, LTB4 ;562±189pg/105cells, 以下単位同じ), Aはこれを有意に抑制した(LTC4/D4/E4 ;131±51, LTB4 ;340±35).これに対して hepatocyteにおいては, Etx刺激により LTsの産生を認めなかった.一方アラキドン酸剌激では, Kupffer細胞のみならずhepatocyteにもLTsの産生を認め(LTC4/D4/E4 ;199±22), これを Aは抑制しなかった.またリノール酸にも LTs産生刺激作用を認めた.従ってEtx血症で, 肝実質細胞に障害が波及する過程は, Etxにより刺激されたKupffer細胞より放出されるLTs等の起炎症性物質を介するものと考えられ, Aの組織保護作用はこれを抑制することによるものと推測された.しかしさらに病態が進行した状態においては, 脆弱化した各細胞の細胞膜よりアラキドン酸が遊出し, 肝実質細胞自体もLTsを産生し, 組織傷害を増殖増悪させる可能性が考えられる.

キーワード
Kupffer 細胞, hepatocyte, ロイコトリエン, アラキドン酸, レチノール


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