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日外会誌. 94(3): 225-233, 1993


原著

閉塞性黄疸時の胃粘膜障害発生の病態
-特に活性酸素の影響について-

1) 岩手医科大学 第1外科(主任:斎藤和好教授)
2) 岩手医科大学 生化学(主任:小野 繁教授)

伊藤 浩信1)2) , 旭 博史1) , 堀内 三郎2)

(1991年11月25日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時には高頻度に急性胃粘膜病変の発生がみられる.この発生機序における活性酸素の影響を中心に実験的に検討した.
体重200g前後のラットを用い, 対照群(単開腹), 黄疸群(総胆管結紮切離), 迷切群(両側幹迷切), 黄疸+ 迷切群の4群を作成し術後2週間目に23℃8時間の水浸拘束ストレスを負荷後, 各群の胃粘膜について潰瘍係数(UI), 胃粘膜血流(GMBF), 胃粘膜pH, 胃粘膜PD, 胃粘膜内の活性酸素発生系としてxanthine oxidase(XOD)活性, 過酸化脂質(LPO), 消去系としてsuperoxide dismutase(SOD)活性, GSH-peroxidase(GPO)活性を測定した.
黄疸群, 迷切群は対照群と, 黄疸+ 迷切群は黄疸群とそれぞれ比較検討した.水浸拘束ストレスによりUIは黄疸群では対照群より高く, 迷切群では低く, 黄疸+迷切群では黄疸群より低く推移した.GMBFは黄疸群では対照群より低く推移したが, 迷切群では対照群と, 黄疸+迷切群では黄疸群と同様に推移した.PDは黄疸群, 迷切群ともに対照群より低く推移したが, 黄疸+迷切群では黄疸群と同様に推移した.pHは黄疸群, 迷切群ともに対照群より高く推移したが黄疸+迷切群では黄疸群と大きな差はなかった.XOD活性は黄疸群では対照群より高く推移したが, 迷切群では大きな差はなかった.黄疸+迷切群では黄疸群より低く推移した.LPOは黄疸群では対照群より高く推移したが, 迷切群では大きな差はなかった.黄疸+迷切群では黄疸群より低く推移した.SOD活性は黄疸群では対照群よりやや高く推移したが, 迷切群では大きな差はなかった.黄疸+迷切群では黄疸群よりやや低く推移した.GPO活性は黄疸群では対照群より高く推移したが迷切群では大きな差はなかった.黄疸+迷切群では黄疸群より低く推移した.
閉塞性黄疸時には急性胃粘膜病変が発生しやすく, その理由としてGMBF, PDなどの胃粘膜防御因子の低下に加え活性酸素による影響が関与していることが示唆された.

キーワード
閉塞性黄疸, 急性胃粘膜病変, 活性酸素, 胃粘膜血流, 胃粘膜 PD

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