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日外会誌. 94(2): 104-113, 1993


原著

残胃の発癌に関する実験的検討
-Billroth I 法とBillroth II 法吻合の比較-

金沢大学 医学部第2外科学教室(指導:宮崎逸夫教授)

鎌田 徹

(1991年9月10日受付)

I.内容要旨
幽門側胃部分切除後の再建には一般にBillroth I法(B-I法)かBillroth II法(B-II法)吻合が用いられている.これらの再建法別の残胃発癌リスクおよび発癌過程を知る目的で, Wistar系雄性ラットの腺胃の幽門側を2/3切除後, 残胃を十二指腸に吻合するB-I法(n=22)および空腸と吻合するB-II法(n=24)を作成し, 50週後の残胃における腫瘍発生率, 残胃粘膜の病理組織学的変化ならびに細胞動態について検討した.腫瘍および癌はB-II法群の残胃吻合部にそれぞれ25.0%, 20.8%に認められたのに対し, B-I法群では認められなかった.吻合部での偽幽門腺, 拡張腺管およびgastritis cysticaprofunda(GCP)出現率はB-I法群ではそれぞれ27.3%, 31.8%, 9.1%であったのに対し, B-II法群では91.7%, 79.2%, 50.0%と3病変とも有意にB-II法群で高率であった.吻合部胃底腺の萎縮もB-II法群において強かった.さらに細胞動態からみると, 増殖帯における細胞数はB-II法群では21.8±12.7個で, B-I法群の10.6±3.7個に比較して有意に多く, 増殖帯の拡大が認められた.DNA合成時間はB-I法群の8.3±2.2時間に対し, B-II法群では12.0±2.1時間と有意に長く, 世代時間もB-II法群では35.5±6.3時間で, B-I法群の20.9±5.6時間に比較して有意に延長していた.偽幽門腺の粘液細胞, 拡張腺管の増殖活性は低く, GCP, 癌巣部では比較的高い増殖活性が認められた.以上より, B-II法ではB-I法に比較して残胃吻合部粘膜の増殖帯細胞が障害を受け易く, DNA合成時間や世代時間が延長すると, 胃底腺の萎縮が進み, 拡張腺管, 偽幽門腺, GCPが高率に出現してくる.このような組織学的ならびに細胞動態的変化が起きやすいB-II法再建は残胃に発癌しやすい環境をもたらすと考えられる.

キーワード
残胃癌, 再建法, 細胞動態, 十二指腸液

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