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日外会誌. 93(10): 1297-1304, 1992


原著

小腸閉塞の治療方針の Decision Analysis

帝京大学 医学部第1外科

三浦 誠司 , 三重野 寛治 , 三吉 博 , 網野 賢次郎 , 大瀧 和彦 , 青木 久恭 , 四方 淳一

(1991年6月14日受付)

I.内容要旨
小腸の絞扼性イレウス,癒着による単純性イレウス,再発癌によるイレウスの治療方針決定に臨床判断分析を適用し,これまでの治療方針決定は何を指標(効用値)として行われてきたのか,今後臨床判断分析を改善してゆくためにはどのようなデータが必要なのかを明らかにした. Weinsteinらの通常の方法にしたがって判断樹を作成して確率・効用値のデータを割付け,期待値を計算して望ましい選択肢を選び,分析の結果が安定しているかどうかを見るために感度分析・閾値分析を行った.文献および教室のデータを用い,絞扼性イレウスに関しては国内8施設の外科にアンケート調査を行い用いた.絞扼性イレウスではただちに手術する,経過観察する,腹部超音波検査(以下US)で方針を決める,の3つの選択肢を設けた.死亡率・合併症率・入院日数を効用値としたときはUSの方針が,腸管壊死率を効用値としたときはただちに手術する方針が選択された.経過観察の方針はすべての場合に最も望ましくない期待値であった.癒着による単純性イレウスではただちに手術する, long tubeで減圧して保存的に治療する, long tube減圧に小腸造影を加えて方針を決める,の3つの選択肢を設けた.合併症率.入院日数を効用値としたときは小腸造影の方針が,癒着による閉塞再発率を効用値としたときはただちに手術する方針が選択された.再発癌によるイレウスでは手術と保存的治療との2 つの選択肢を設けた.閉塞解除率• 生存月数を効用値としたとき手術の方針が選択された.臨床判断分析は治療方針決定のための個々の指標を,定量的に評価するために有用であった.しかしそのために必要な疾患の有病率・事前確率,診断検査の精度,種々の病態がおこる確率,種々の臨床状態における効用値などのデータは不足していた.今後臨床判断分析を改良してゆくためにはprospectiveな目でみたデータの検索と集積が必要である.

キーワード
decision analysis, 腸閉塞, 絞扼性イレウス, 単純性イレウス, 癌性イレウス


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