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日外会誌. 93(10): 1289-1296, 1992


原著

胸部食道癌の転移リンパ節に関する病理組織学的検討

鹿児島大学 医学部第1外科

吉中 平次 , 島津 久明 , 夏越 祥次 , 原口 優清 , 島田 麻里緒 , 馬場 政道 , 福元 俊孝

(1991年6月22日受付)

I.内容要旨
食道癌のリンパ節転移について,郭清の効果や術前の診断成績を不良にしている要因を明らかにすることを目的に,頸・胸・腹部の3領域リンパ節郭清が行われた胸部食道癌切除104例の摘出リンパ節を病理組織学的に検討した. 104例で合計7,744個(平均74個)のリンパ節が摘出され, 73例(転移率70.2%) で合計503個(平均6.9個)のリンパ節に組織学的に転移が認められた.最大割面における長径と短径の平均をリンパ節の大きさとすると, 503個の転移リンパ節のうち125個(24.9%)は5mm未満, 218個(43.3%) は5mm以上10mm未満の大きさであり,また頸部や腹部に比べて縦隔の転移リンパ節は小さい煩向にあった.最大割面における転移部分の占める比率を転移面積とすると, 149個(29.6%)は転移面積が1/3未満, 106個(21.1%)は転移面積が1/3以上2/3未満であり,頸部や腹部に比べ縦隔で転移面積の小さい転移リンバ節が有意に高頻度に認められた.転移部分の径の総和が1mm以下のリンパ節を微小転移とすると, 503個のうち67個(13.3%)がこれに該当し,頸部や腹部に比べて縦隔の転移リンパ節で有意に高頻度であった.リンパ節外へ1mm以上離れた結合織や脂肪組織への浸潤を節外浸潤,同様にリンパ節から離れたリンパ管や血管内の癌浸潤を脈管侵襲とすると, 503個の転移リンパ節のうち106個(21.1%)に節外浸潤, 60個(11.9%)に脈管侵襲が認められた.上記事項を症例単位で検討すると, リンパ節転移陽性73例のうち24例(32.9%) に微小転移, 29例(39.7%)に節外浸潤あるいは脈管侵襲が認められた.微小転移や節外浸潤・脈管侵襲は転移リンパ節個数の多い症例で有意に高率に認められ,これらを伴う症例の予後もまた有意に不良であった.以上の成績は,食道癌患者の手術術式や郭清範囲の決定における術前画像診断の意義や治療方針の選定に関して種々の有効な情報を提供するものと思われる.

キーワード
胸部食道癌, リンパ節転移, 拡大リンパ節郭清, 微小転移, 節外浸潤


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