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日外会誌. 93(7): 739-747, 1992


原著

膵癌細胞に対するモノクローナル抗体 (Nd2) の免疫生化学的並びに腫瘍集積性に関する基礎的検討

大阪市立大学 医学部第1外科

澤田 鉄二

(1991年4月5日受付)

I.内容要旨
近年モノクローナル抗体(MoAb)を両像診断,治療へと応用する試みがなされているが, これには癌特異性が高く,また腫瘍集積性の強い抗体が理想とされている.膵癌は早期診断が困難であり,悪性度も高いことからさまざまな診断,治療法が試みられているが, MoAbを応用した報告はみられない.そこて著者は,ヒト膵癌細胞株SW1990より精製したmucin分画を免疫原として作製された膵癌に対する新しいモノクローナル抗体Nd2について,認識抗原の解析,免疫生化学的検討とともに125I標識による腫瘍集積性の基礎的検討を行い,以下の成績を得た.
1) Enzyme Linked Immunosorbent Assayを用いた認識抗原の解析で, Nd2の認識抗原は,Trypsinおよび加熱処理によって抗原性が低下し,また過ヨウ素酸処理でも若干の低下がみられたが,neuraminidase処理による影響は認めなかった.これらの点からNd2の認職する抗原epitopeにはペプタイドが強く関与しているものと考えられた. 2)免疫組織染色ではNd2は膵癌組織に対して約83%の陽性率を示したが,慢性膵炎および正常膵組緻との反応性は認められず,膵癌細胞に高い特異性を示した. 3) ヒト膵癌細胞株SW1990を移植した担癌ヌードマウスに125I標識Nd2を静脈内投与して,投与後, 1. 3, 7日目に腫瘍を含め各臓器の放射活性を測定し体内分布を検討した結果,腫瘍におけるTissue:Blood比(T/B比)は,肝,脾など他臓器に比べ経日的な上昇を示し7日目には8.3と高値で, Nd2の弛い腫瘍集積性が示唆された.
以上の成績から, Nd2は膵癌に対する免疫両像診断,さらには膵控のターゲット療法など,臨床応用への有用性が示唆された.

キーワード
膵癌, モノクローナル抗体, Nd2, 腫瘍集積性, 腫瘍イメージング


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