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日外会誌. 93(7): 731-738, 1992


原著

胃癌切除後胆石症の実験的研究
―胃亜全摘術兼全幹迷走神経切離術後のイヌ胆嚢胆汁組成の経時的変化―

弘前大学 医学部第2外科

杉山 譲 , 森谷 洋 , 羽田 隆吉 , 小堀 宏康 , 鈴木 英登士 , 今 充 , 小野 慶一

(1991年3月22日受付)

I.内容要旨
胃癌切除後胆石症の発生原因のなかで,胆嚢運動機能についてはよく検討されているが,胆石形成にいたる胆嚢胆汁組成の経時的変化については,臨床上胆汁採取が困難という問題のため殆ど知られていない.そこで実験的に胆嚢胆汁を12カ月問に亘り経時的に採取,胆汁組成の変化,胆汁感染の有無について検討した.対象は雄雑種成犬11頭で外胆嚢痩造設のみの対照群4頭と,これに胃癌切除に準じた胃亜全摘兼幹迷切を追加しBillroth I法で再建したBI群3頭, Billroth II法で再建したBII群4頭の3群とした.その結果, 1)TBAは3群間に差はないが,分画ではBI群, BII群は対照群に比ベ二次胆汁酸DCAが高いレベルで推移し,一次胆汁酸CAが低いレベルで推移した.また,遊離型胆汁酸の増加が顕著であった. 2) Lithogenicityは3群共低かった. 3)術後8カ月で死亡した対照群の1頭を除く残りの10頭に,術後2~3カ月より胆嚢胆汁の持続感染を認めた. 4)BI群3頭中1頭, BII群4頭中2頭にビリルビンカルシウムを含む黒色石が発生したが,対照群には発生しなかった. 5) 以上の結果を総合して考えると,胆石の発生には胆汁感染が重要な因子と思われた.しかし,胆汁感染は対照群にも認められたが胆石は発生せず,しかもBI群, BII群にみられた二次胆汁酸の高値および遊離型胆汁酸の増加がみられなかったことより,胃亜全摘兼幹迷切も胆石形成になんらかの重要な影響を与えているものと考えられた.

キーワード
胃癌切除後胆石症, 胃亜全摘兼幹迷切, 胆襄胆汁組成, 胆汁酸, 胆汁感染


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