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日外会誌. 93(6): 589-598, 1992


原著

腸管虚血・再灌流後のreperfusion injuryに対するフリーラジカルおよびα-トコフェロールの関与についての実験的研究

藤田学園保健衛生大学 医学部外科学教室

花井 厳人 , 木村 忠広 , 白石 天三 , 佐野 真 , 松本 純夫 , 船曳 孝彦 , 吉崎 聰

(1991年3月22日受付)

I.内容要旨
ラットの腸管を使用し,小腸一過性虚血,及び虚血ー再灌流モデルを作製し,小腸再濯流障害におけるフリーラジカルの関与と,抗酸化剤であるビタミンEの影響を小腸粘膜組織中の過酸化脂質(t­-LPO), superoxide dismutase (t-SOD), α-tocopherol (t-α-Toc)の変動と,小腸粘膜の組織学的障害程度につき検討した.
対象は9~11週齢Wistar系雄性ラット67匹,平均体重356±29g,群の設定は,N群(n=8) : con­trol, A-I群(n= 10) : 30分ischemia, A-II群(n= 10) : 120分ischemia, B-I群(n=9) : 30分is­chemia+declamp直後,BII群(n=10) : 30分ischemia + 30分reperfusion, B-III群(n=10) : 120分ischemia + 30分reperfusion, E群(n=10):ビタミンE投与30分ischemia + 30分reperfusionの7群とし,ビタミンEは15mg/kgを前腸間膜動脈遮断前に頸動脈より動注した.t-LPOは組織法(大川らの方法),t-SODは亜硝酸法(大柳らの変法),t-α-TocはHPLC法にて測定した.t-LPOではN群とB-II群,N群とB-III群,A-II群とB-III群,B-II群とB-III群,B-II群とE群(p<0.01), B-I群とB-II群(p<0.05), t-SODではN群とB-I群(p<0.01), N群とE群,B-I群とB-II群(p<0.05), t-α-TocではN群とB-II群,N群とB-III群,N群とE群,A-I群とB-I群,A-I群とB-II群,B-II群とE群(p<0.01), N群とB-I群(p<0.05)にそれぞれ有意差を認めた.組織学的にはB-I群,B-II群では,A-I群に比し組織障害の増悪を,E群では,B-II群に比し組織障害の軽減を認めた.以上より,再灌流による組織障害を確認するとともに,再灌流障害におけるフリーラジカルの関与が推察された.又,外因性ビタミンE投与により過酸化脂質生成が抑制され,組織障害の軽減が認められたことにより,外因性ビタミンEには小腸再濯流障害抑制作用,即ち,脂質ラジカル消去作用による細胞保護作用が認められた.

キーワード
reperfusion injury, α-トコフェロール, 腸管虚血, cytoprotection, フリーラジカル


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