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日外会誌. 93(5): 518-522, 1992


原著

エリスロポエチン投与例の細胞性免疫能の動向
―開心術後症例の検討と術後紅皮症患者への投与の試み―

久留米大学 医学部第2外科

久冨 光一 , 安永 弘 , 磯村 正 , 福永 周司 , 平野 顕夫 , 小須賀 健一 , 大石 喜六

(1990年11月28日受付)

I.内容要旨
今回我々は,開心術症例に対し,術前術後にエリスロポエチン(EPO)を投与し,細胞性免疫能の変動を測定するとともに,今回の結果をもとに,開心術後に発生した紅皮症患者に投与を行った.対象は, I群-EPO非投与開心術例30例, II群-EPO投与開心術例20例で, EPOは200単位/kgを経静脈的に,術前術後連日投与し,術前 (EPO投与開始前後の2回),術後1日, 3日, 7日, 14日目の計6回の網状赤血球および各種の細胞性免疫学的検査を行った.その結果,(1) 網状赤血球は, EPO投与群で明らかに上昇した.(2) OKT3+Tリンパ球百分率, OKT4+Tリンパ球百分率は,両群で術後1日目に有意の低下を認めるものの,投与群において有意な高値を示した. OKT8+Tリンパ球百分率の変動は少なく, OKT4+T/OKT8+Tリンパ球百分率比は,結果的にOKT4+細胞数と同様な推移を示した.(3) リンパ球幼若化反応は,投与群で高値を示したが,術後の変動は両群とも同様であった.(4) インターロイキン2(IL-2)産生能もPHA-SIと同様に, EPO投与群で上昇し,術後1日目には低下するものの標準値域にあり,術後3日目には高値を示していた.今回このような結果をもとに,冠動脈バイパス術後に,全身の紅斑,貧血,白血球減少,食欲不振を訴えた術後紅皮症患者に対し, EPOの投与を試みた.その結果,発疹発症後2日目にはIL-2産生能の著しい低下を認めたが, EPO投与後4日目には,全身状態の改善,紅斑の退縮,さらにはIL-2産生能の上昇も認められ, EPOのリンパ球系, とくにhelperT細胞系への作用をさらに示唆するものと考えている.

キーワード
エリスロポエチン, 細胞性免疫能, インターロイキン2産生能, 開心術, 術後紅皮症


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