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日外会誌. 93(5): 488-493, 1992


原著

組織計測による非癌部肝組織所見からみた肝細胞癌の臨床病理学的特徴

*) 神戸大学 医学部第1外科
**) 神戸大学 医学部第1病理

岩崎 武*)**) , 具 英成*) , 斎藤 洋一*) , 伊東 宏**)

(1991年3月2日受付)

I.内容要旨
肝細胞癌切除例56例及び剖検例33例の計89例について非癌部の性状(間質比と偽小葉の面積,最大径及び形状係数の各平均値の4項目の形態指標)を組織計測により定量化し,肝細胞癌の腫瘍径,門脈侵襲,肝内転移等の臨床病理学的特徴との比較検討を行った.まず間質比については,腫瘍径3cm未満及び以上の群で各々23.5±6.7%, 18.5±8.9%となり3cm未満の方が高かった(p<0.01).肝内転移の有無については陰性群,陽性群で各々17.5±9.0%及び21.3±8.0%となり陽性群で高く(p<0.05),特に硬変合併例では腫瘍径の小さいものでも肝内転移を有する進展例のあることが注目された.次に肝硬変例について,間質比に加えて測定した他の形態指標のうち,偽小葉面積を腫瘍径3cm未満及び以上で比較すると各々1.78±1.01mm2及び2.54±1.87mm2となり腫瘍径3cm以上で大きかった(p<0.05).また肝内転移の有無では陰性群,陽性群で各々1.67±0.96mm2,2.67±1.91mm2となり陽性群で偽小葉面積は大きかった(p<0.01). これらの結果から肝内転移を有する進行例で肝硬変としてもより進行したと考えられる大結節型の肝硬変が多いことが考えられた.以上より非癌部肝組織の形態学的性状は,従来から指摘されているような肝細胞癌の発生との関連だけでなく,その後の発育,進展様式とも密接な関連性を持つことが示唆された.

キーワード
組織計測, 非癌部肝組織, 肝細胞癌

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