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日外会誌. 93(3): 300-305, 1992


原著

除神経組織での,プロスタサイクリンの効果
(特に除神経後過敏性の存在について)

愛媛大学 医学部外科学第1

平谷 勝彦 , 岩橋 寛治 , 恒川 謙吾

(1991年2月4日受付)

I.内容要旨
移植血管や臓器などの除神経組織を念頭に,除神経組織での薬剤反応を検討した.特に今まで明らかでない,拡張物質での除神経後過敏性の存在を検討するため,プロスタサイクリン(PGI2)を使用し検討した.
<方法>雑種成犬を使用し,片側の腰部交感神経節切除(腰交切)を行い, 2~3週後両側後肢足背動脈と伏在動脈を摘出した. 1) グリオキシル酸法で血管組織を検討した. 2) マグヌス装置で血管反応を検討した.収縮物質として,ノルエピネフリン(NE),塩化カリウム(KCI)を使用し,その半収縮量(ED50)収縮に対するPGI2の拡張程度を検討した.
<結果>1) 腰交切側の摘出血管は組織化学的に除神経されている事が確認された. 2a) 腰交切側血管は,収縮物質NE及びKCIに対し過敏性を有していた.その程度は, NEに対する時の方が大きかった. 2b) 腰交切側血管は拡張物質PGI2に対しても過敏性を有していた.また拡張の程度は, KCI収縮に対する時よりNE収縮に対する時の方が大きかった. PGI2に対する過敏性の機序は,nonspecificと称される過敏性と考えられ,またPGI2の血管拡張機序はNE収縮機序と関係あると考えられた.
<まとめ>今まで報告されている収縮物質ばかりでなく,拡張物質についても過敏性が認められた.移植に関連した除神経組織の血流維持のため,血管拡張物質の投与は,選択的にその臓器の血管を拡張させる事が示唆された.そのことは,体血圧の低下をあまり伴わずに当該臓器の血流増加が期待され,有用と考えられた.

キーワード
除神経後過敏性, 腰部交感神経節切除術, プロスタサイクリン, 臓器移植


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