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日外会誌. 93(2): 208-211, 1992


症例報告

DNA heterogeneity を示した甲状腺乳頭癌の1剖検例
ー原発巣および転移巣の DNA 量の比較ー

信州大学 医学部第2外科
*) 信州大学 医学部第1病理

小松 誠 , 小林 信や , 菅谷 昭 , 増田 裕行 , 高橋 昭三 , 飯田 太 , 伊藤 信夫*)

(1990年12月25日受付)

I.内容要旨
DNA heterogeneityを示した甲状腺乳頭癌の1例を経験した.症例は56歳女性. 1986年左甲状腺癌の診断となるが,心不全状態により手術不能と考え,内照射療法,外照射療法,局所免疫療法を行うも,奏効せず, 1989年死亡した.剖検時の摘出標本より,原発巣,転移巣(胸骨,頸部および縦隔リンパ節,肺)の各々についてFlow cytometryを用いて核DNA量測定し,またサイログロブリン,CA19-9, CA125の免疫組織染色も併せて行った.Ploidy patternと免疫組織染色との間には明らかな関連性は認められなかった.原発巣内,胸骨転移巣および肺転移巣にはDNA diploid (DP) とDNA index (DI) 1.3のDNA aneuploid (AP) の2つのパターンが認められたが,リンパ節転移巣にはDPのみが認められた.転移のメカニズムを考えるうえでも有用と思われたので報告する.

キーワード
甲状腺癌, DNA heterogeneity, 転移


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