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日外会誌. 93(2): 144-149, 1992


原著

ライソゾーム酵素の変動より見た閉塞性黄疸肝細胞の脆弱性に関する基礎的検討

千葉大学 医学部第1外科

伊藤 博 , 宮崎 勝 , 宇田川 郁夫 , 越川 尚男 , 奥井 勝二

(1990年10月17日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸(閉黄)肝細胞の侵襲に対する脆弱性につき,細胞障害度を反映し,かつそれ自体が障害増悪因子となるライソゾーム酵素の変動に注目し,総胆管結紮(BDL)により閉黄ラットを作成後,肝よりライソゾーム分画を抽出し, in vitroで基礎的検討を行った.
細胞侵襲を定量化する目的で,ライソゾーム分画に膜燐脂質分解酵素であり,かつライソゾーム酵素の一つでもあるphospholipaseA2 (PL-A2) を0.05, 0.2, 1.0U/mlの各濃度で添加し,放出されるライソゾーム酵素のうちcathepsinD, β-glucronidaseの酵素活性を時間経過とともに定量した.
正常肝及びBDL5日, 14日ラット肝ライソゾーム分画に, PL-A2を添加培養すると,放出されるcathepsin D, β-glucuronidase活性は,添加されたPL-A2濃度に応じ上昇するが,その値は閉黄肝で高く,また,閉黄期間の延長に伴い有意に高値を示したことより,閉塞性黄疸肝細胞でのlysosomalmembraneの侵襲に対する脆弱性が示された.
次に単位肝重量当たりのライソゾーム分画中の蛋白含量と, TritonX-100処理により放出された単位蛋白量当たりのcathepsinD活性総量を測定したところ,ライソゾーム分画蛋白含量では,正常肝,閉黄肝に有意差を認めなかったが, cathepsinD活性では,閉黄肝で有意に高値 (BDL5日; p<0.01, BDL 14日; p<0.001) を示し,閉塞性黄疸肝細胞でのライソゾーム酵素の活性総量の増加が示された.lysosomal membraneの脆弱度の指標として, PL-A2添加後,培養10分で放出されるcathepsinDの値をcathepsinD活性総量で除した値をfragility scoreとし,正常肝,閉黄肝でPL-A2濃度を変え比較すると,閉黄肝で有意に高値を示し,閉塞性黄疸肝細胞でのlysosomal membraneの脆弱性が確認された.

キーワード
閉塞性黄疸, ライソゾーム, phospholipase A2


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