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日外会誌. 93(1): 96-101, 1992


原著

肺癌切除例における切除断端陽性例の検討

東京医科大学 外科

三浦 弘之 , 松島 康 , 永井 完治 , 河手 典彦 , 米山 一男 , 小中 千守 , 加藤 治文

(1990年11月28日受付)

I.内容要旨
原発性肺癌切除例のうち,組織学的に切除断端陽性で非治癒切除となった61例について検討を加えた.病期及び組織型は, stageI 7例(扁平上皮癌5例,腺癌1例,腺扁平上皮癌1例), stageII 4例(扁平上皮癌3例,扁平上皮癌+小細胞癌1例), stageIIIA 36例(扁平上皮癌18例,腺癌13例,大細胞癌3例,扁平上皮癌+小細胞癌1例,腺癌+小細胞癌1例), stageIIIB 14例(扁平上皮癌6例,腺癌6例,大細胞癌2例)であった.断端癌遺残部位は,気管支断端27例,胸膜18例,肺動静脈7例,胸壁5例,隣接臓器5例,切除肺断端3例であった.
切除断端陽性例の50%生存期間は17カ月であり, 5生率は24.1%であった.切除断端陰性例はそれぞれ62カ月, 50.7%と断端腸性例は有意に予後が悪かった.これは特に断端陽性例のstage I・ IIの予後の悪さに関連していた. stageIIIA • IIIBでは放射線療法施行群の方が50%生存期間が短かった.気管支断端陽性例と,気管支以外の断端陽性例との間には予後に関し有意な差は認められなかった.気管支断端陽性例を癌の遺残部位別に上皮例(6例),軟骨周囲例(16例),脈管侵襲例(5例)に分類した.上皮例は過半数が生存中であるが,後2者の50%生存期間は16カ月および18カ月で,前者との間に有意な差を認めた.気管支断端の癌遺残部位を術前の気管支鏡所見から推定することは困難であった.
長期生存が期待できる症例は,扁平上皮癌でリンパ節転移がなく,遺残した癌組織が,気管支断端では上皮に,それ以外では壁側胸膜までにとどまる症例であった.この様な症例には局所放射線療法が有効であるが,気管支断端のうち脈管侵襲のある症例や軟骨周囲組織遺残例,胸壁や隣接臓器に浸潤した症例では,放射線の効果は疑問であり,全身的な疾患として治療に当たる必要がある.

キーワード
肺癌, 非治癒切除, 切除断端陽性


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