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日外会誌. 93(1): 26-35, 1992


原著

肝血行動態に及ぼすドパミンの直接効果
-肝静脈分離・活性炭吸着法 (HVI-DHP) を用いた実験的検討-

神戸大学 医学部第1外科

富永 正寛 , 具 英成 , 大柳 治正 , 斉藤 洋一

(1990年10月22日受付)

I.内容要旨
肝静脈分離・活性炭吸着法(HVI-DHP)により全身循環動態への影響を除外し,肝血行動態に及ぼすドパミンの直接効果を検討した.雑種犬をドパミン投与ルートにより, I:末梢投与群(n=3), II :HVI-DHP下肝動脈投与群(n=7), III : HVI-DHP下門脈投与群(n=6) の3群に分け,大動脈,肝動脈及び門脈の血流測定を行った. I群では肝動脈血流比(HA/AO)は, ドパミン1~10μg/kg/min投与で2±10~29±9%の減少を認めたのに対し,門脈血流比(PV/AO) は, 5及び10μg/kg/min投与で各々, 14±11及び11±12%の増加にすぎなかった. II, III群では,投与群にかかわらず,肝静脈血中ドパミン濃度はHVI-DHPにより吸着前の2.7±1.6%まで低下し,大動脈血流量は両群とも5%以下の変化率に留まった. ドパミン0.25~10μg/kg/min投与によりHA/AOはII群で4±14~42±12%, III群で10±9~51±11%の濃度依存性の減少をしたが, PV/AOには有意な変化を認めず,総肝血流比(HA+PV/AO)は,10μg/kg/min投与でII群17±10%,III群18±11%の低下を示した.両群とも, a blockerのレギチーン前処理でHA/AOの減少が抑制され, ドパミンDA1blockerのSCH-23390では変化を認めず, a作用の関与が推測され, DA1receptorの存在は確認されなかった. HVI-DHP下では,投与ルートにかかわらず, 0.25μg/kg/min(末梢投与の1~3μg/kg/minに相当)の低濃度から肝動脈血流の低下を認め, Sinusoid或いはPost-Sinusoidレベルのドパミンの直接作用と考えられた.以上HVI-DHPにより, ドパミンの肝循環への特異的作用を検討した結果,門脈血流増加作用のみでなく,肝動脈血流低下による影響を同時に考慮する重要性が示された.

キーワード
ドパミン, 肝血行動態, 肝静脈分離・活性炭吸着

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