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日外会誌. 92(12): 1708-1712, 1991


原著

乳癌胸壁浸潤・再発の病態と切除再建術の意義

国立大阪病院 外科

高塚 雄一 , 岡村 泰彦 , 小早川 清 , 河原 勉

(1990年11月2日受付)

I.内容要旨
近年,乳癌の胸壁浸潤や再発例に対して,広範囲の胸壁全層切除・再建術が積極的に行われており,手技面での安全性はほぼ確立してきた.今回の研究では,自験例の胸壁浸潤・再発23例についてその病態および遠隔成績を検討することより,胸壁切除・再建術の意義およびその適応を明確にした. 
1)まず病態としては,過半数のものに遠隔転移が認められており,systemic diseaseとしての理解が必要であった.2)切除・再建術後のlocal control rateは,全体としては73.9%と優れていたが,縦隔浸潤例に限っては25.0%と著しく不良であった.3)遠隔成績に関しては,胸骨転移例が最も良好であり,ついで胸壁単独再発であり,縦隔浸潤や遠隔転移合併例の予後はやはり不良であった.4)予後因子としてはD.F.I.が最も重要であり,5年以上のものの切除後の生存率は2年未満のものに比べて,有意に延長していた.
以上の結果より,胸壁切除・再建術施行に際しては,D.F.I.の長い胸壁単独再発や胸骨転移例は積極的なindicationであり,逆に明らかな縦壁浸潤例は適応から除外すべきと考える.また遠隔転移例でも,reduction surgeryやQ.O.L.の改善を目的とした意義は認められた(relative indication).

キーワード
乳癌, 胸壁再発, 胸壁切除・再建術, 筋皮弁


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