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書誌情報]
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日外会誌. 92(12): 1700-1707, 1991
原著
甲状腺癌における甲状腺全摘術後のホルモン補充療法の検討
ー間接熱量計を用いた甲状腺ホルモン末梢作用の解析からー
I.内容要旨甲状腺全摘術を施行した甲状腺癌18例を対象に,術前後の甲状腺ホルモン末梢作用を間接熱量計を用いてエネルギー代謝の面から解析した.また甲状腺癌術後のTSH抑制を目的とした補充療法における外因性甲状腺ホルモンの末梢作用について検討した.対象例は甲状腺全摘術後3週間甲状腺ホルモンを補充しないで維持し,術前の内因性甲状腺ホルモンが正常期,術後3週目の内因性ホルモンがほぼ消失した時期,外因性ホルモン補充により甲状腺機能が急速に回復した時期,補充療法が安定した各時期の安静時熱量消費量(Resting energy expenditure:以下REE)を測定した.さらに各時期のREEと基礎熱量消費量(Basal energy expenditure:以下BEE)との比(以下REE/BEE値)を求めてエネルギー代謝量とし,血中甲状腺ホルモン値の変動と比較して以下の結果を得た.
1.甲状腺全摘術前後の内因性甲状腺ホルモンとREE/BEE値の推移には正の相関関係が認められ(free T
3とREE/BEE値の関係, r=0.756, p<0.01),甲状腺ホルモン末梢作用の指標として,エネルギー代謝量(REE/BEE値)の測定は臨床的に有用と考えられた.
2.甲状腺全摘後のLevothyroxine(3.1±0.3μg/kg/day)によるホルモン補充開始1週後では,血中甲状腺ホルモン値はfree T
3を除きほとんど正常化したが,REE/BEE値はまだ低値で,血中ホルモン値に比して代謝の回復は遅れる傾向にあった.
3.甲状腺ホルモン補充開始5週後では,T
4やfreeT
4は正常より幾分高値にもかかわらずREE/BEE値は正常域にあり,エネルギー代謝量の亢進は認めなかった.したがって当科で行っているLevothyroxineのみによりTSHを抑制する補充療法は,エネルギー代謝の面からみても妥当と考えられた.
キーワード
甲状腺ホルモン末梢作用, 間接熱量測定, 安静時熱量消費量, 基礎熱量消費量, 甲状腺ホルモン補充療法
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