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日外会誌. 92(12): 1678-1685, 1991


原著

10%脂肪乳剤長期大量投与時に出現するリポ蛋白X (Lp-X) の生成と異化

千葉大学 医学部第1外科

安倍 己紀男 , 田代 亜彦 , 真島 吉也 , 山森 秀夫 , 西沢 正彦 , 真田 正雄 , 奥井 勝二

(1990年10月29日受付)

I.内容要旨
10%脂肪乳剤長期大量投与時に出現するLp-Xの生成と異化をin vitroにおいて検討した.
(1)TPN管理下の外科疾患患者14名に対し10%脂肪乳剤20ml/kg・日を4~8週投与した後の血清を用いた.(2)Lp-Xの分離には超遠心とdextran-sulfate chromatographyを使用し,分離したリポ蛋白をagar電気泳動にかけ陰極へ移動することを確認した.(3)実験1では〔3H〕コレステロールを取り込ませたJ774マクロファージとLp-Xをincubateしreverse cholesterol transportを検討した.(4)実験2では,組織細胞のモデルとしてJ-774マウスマクロファージを使い,Lp-Xの組織への取り込みを検討した.(5)実験3では肝細胞モデルとしてHep G2 cellを使い,Lp-Xの肝細胞への取り込みおよび胆汁酸への排出を検討した.
(1)分離したLp-Xは遊離コレステロール(27%)と燐脂質(51%)に富み,蛋白はアポCII,CIII,Eを多く含んでいた.(2)実験1でLp-XではHDLを加えた群を上回るreverse cholesterol transportを認めた.(3)実験2ではLp-Xはほとんどマクロファージには取り込まれなかった.(4)実験3では,Lp-XはLDLの約10分の1,HDLと同程度の取り込みを認めた.取り込まれた〔3H〕の一部は胆汁酸として排出された.
(1)脂肪乳剤投与時の遊離コレステロールの増加は組織よりのreverse cholesterol transportによる可能性が強い.(2)Lp-Xはscavenger pathwayによる異化はほとんどなかった.(3)Lp-Xは肝臓においてすみやかに代謝され一部は胆汁酸として排出されていた.

キーワード
Intralipid, リポ蛋白 X

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