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日外会誌. 92(11): 1627-1635, 1991


原著

胆囊癌細胞株を免疫原とする2種類の新しいモノクロナール抗体の作製

1) 福岡大学 医学部第1外科
2) 福岡大学 医学部第1病理

西田 哲朗1) , 城崎 洋1) , 田中 伸之介1) , 志村 秀彦1) , 岩崎 宏2) , 増田 雄一2) , 菊池 昌弘2)

(1990年9月12日受付)

I.内容要旨
方法:胆囊癌患者の癌性腹水細胞から,印環細胞の形態を有する細胞株(FU-GBC-2)を樹立し, これを免疫原として,マウス単クローン抗体FU-W-H6(以下H6)およびFU-W-E2(以下E2)を作製した.また,凍結組織を用いて抗体を免疫組織学的に検討し, FU-GBC-2細胞の免疫染色および免疫電顕にて,抗原の局在を検討した.また,培養細胞の酵素および過ヨウ素酸処理にて抗原の生化学的性状を検討し, SDS-PAGEおよびWestern blottingにて分子量を測定した.
結果:作製された2種類の抗体のclass, subclassは, E2がIgM, κであり,H6はIgG2a, κであった.免疫組織化学的検討では, E2抗体は,大腸癌16例中12例(75%),正常大腸粘膜8例中2例(25%)に陽性,胃癌13例中11例(85%),正常胃粘膜9例中3例(33%)に陽性,胆嚢癌12例中9例(75%),正常胆嚢粘膜(慢性胆嚢炎を含む) 17例中2例(11.7%)に陽性であった. H6抗体は大腸癌16例中1例(6%),正常大腸粘膜10例中0例(0%), 胃癌12例中4例(33%),正常胃粘膜10例中0例(0%),胆嚢癌12例中11例(92%),正常胆嚢粘膜(慢性胆嚢炎症例を含む) 15例中14例(93%),正常胆管5例中5例(100%),膵癌2例中2例(100%),正常膵管5例中4例(80%)に陽性であった. E2抗体は正常粘膜に対して大腸癌,胃癌,胆嚢癌が各々有意に陽性率が高かった(p<0.05). H6抗体は,胆嚢癌が,大腸癌(p<0.01),および胃癌(p<0.05)に対して有意に陽性率が高く,胆嚢,胆管,膵正常粘膜(慢性胆痰炎を含む)が胃および大腸正常粘膜に対して有意に(p<0.01)腸性率が高かった.即ち, E2抗体は消化管悪性腫瘍に陽性率が高く,H6抗体は胆道,膵に特異性が高いと考えられた.また,E2抗体とCEA,H6抗体とCA19-9を隣接切片で比較すると,染色性に明らかな違いがみられた.免疫原の酵素処理により,両抗体の認識する抗原決定基は細胞膜上の糖蛋白についた糖鎖であり,シアル酸も関与しているものと考えられた.抗原糖蛋白の分子量はE2は92,000,H6は87,000であった.

キーワード
胆痰癌培養細胞株, モノクロナール抗体, 糖蛋白抗原

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