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日外会誌. 92(10): 1486-1492, 1991


原著

イヌ膵管癌に関する実験的研究

順天堂大学 医学部外科学教室(外科学第1)(主任:榊原 宣教授)

佐藤 徹也

(1990年9月5日受付)

I.内容要旨
イヌに膵管癌を作成することができれば,小動物と違ってその発生過程を経時的に観察することが可能となり,治療法などの追究にもよき実験モデルとなりうる.実験膵管癌モデルをイヌに作成しようと試みた.
使用したイヌは12頭である.
まず,イヌ4頭にN-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP)50~100mgを膵頭部背側膵管瘻より週1~4回注入した.膵実質の萎縮を認めたが,膵管に癌の発生はみられなかった.
つぎにイヌ2頭にBOP 50~200mgを腹腔内に週1~2回注入した.肝細胞の壊死を認めたが,膵管に癌の発生はみられなかった.
そこで,イヌ2頭にN-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)5mgを膵頭部背側膵管瘻より週1~4回注入した.膵実質の萎縮を認めたが,膵管に癌の発生はみられなかった.
さらにイヌ4頭にENNG 5mgを膵尾側膵管瘻より週1~4回注入したところ,4頭中1頭(ENNG総量595mg)に膵管癌(管状腺癌)を認め,1頭の主膵管内腔に膵管上皮が乳頭状に隆起し,細胞異型・構造異型を伴った過形成を認めた.他の2頭にも膵管上皮の過形成を認めた.
これらの実験から膵管癌のモデルとしてイヌの実験膵管癌作成には膵尾側膵管瘻よりのENNG注入が有用であることがわかった.

キーワード
実験膵管癌, 膵管瘻, N-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine, N-nitrosobis (2-oxopropyl) amine


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