[書誌情報] [全文PDF] (3384KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 92(10): 1493-1502, 1991


原著

乳癌エストロゲンレセプター検索法と抗エストロゲン療法の効果に関する実験的研究

東京女子医科大学付属第二病院 外科

今村 洋

(1990年9月14日受付)

I.内容要旨
乳癌抗エストロゲン療法の適応決定においては細胞質,核内エストロゲンレセプター(以下ERc,ERn)に加え,酵素抗体法によるエストロゲンレセプター(以下ER-ICA)の検索も行なわれるようになった.今回,乳癌組織に各エストロゲンレセプター(以下ER)検索法を試み,その結果を比較すると同時に実験的抗エストロゲン療法を行ない,各検索法の抗エストロゲン療法の適応決定の指標としての意義をみた.対象は原発性乳癌35例で,ERをDCC法,酵素抗体法で検索,同時にsubrenal capsule assay(以下SRCA)により実験的抗エストロゲン療法を行なった.
1)ER検索結果はERc,ERn,ER-ICAそれぞれ63.0%,40.7%,44.4%であった.
2)ERcとERn,ERcとER-ICA,ERnとER-ICA間のER検索結果の一致率はそれぞれ70.4%,66.7%,74.1%であった.
3)抗エストロゲン療法有効率はERc陽性症例で64.7%,陰性症例で20.0%,ERn陽性症例で72.7%,陰性症例で31.3%,ER-ICA陽性症例で91.7%,陰性症例で13.3%であった.
4)ERcが陽性で抗エストロゲン療法が無効とされた6例中5例(83.3%)がER-ICA陰性,ERcが陰性で抗エストロゲン療法が有効とされた2例中2例(100%)がER-ICA陽性であった.
5)ERnが陽性で抗エストロゲン療法が無効とされた3例中1例(33.3%)がER-ICA陰性,ERnが陰性で抗エストロゲン療法が有効とされた5例中4例(80%)がER-ICA陽性であった.
ER-ICA陽性症例ではERc,ERn陽性症例に比べ高い抗エストロゲン療法の有効性が期待されることが証明された.また,ERcが陽性でもER-ICAが陰性のものは抗エストロゲン療法が無効となる可能性が高いこと,ERcが陰性でもER-ICAが陽性のものは抗エストロゲン療法が有効となる可能性が高いことが示唆された.以上の結果より乳癌抗エストロゲン療法の適応を決定する際にER-ICAを測定することは意義のあることと思われる.

キーワード
乳癌, 抗エストロゲン療法, エストロゲンレセプター


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。