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日外会誌. 92(10): 1436-1443, 1991


原著

ヌードマウス可移植性ヒト胃癌の増殖と血清および組織 carcinoembryonic antigen の変動

日本医科大学 第1外科学教室(主任:恩田昌彦教授)
日本医科大学 第2病理学教室(指導:浅野伍朗教授)

木山 輝郎

(1990年9月3日受付)

I.内容要旨
ヌードマウス可移植性ヒト胃癌4株を用いてそれぞれの腫瘍増殖と血清CEA値および組織CEA値の変動について比較検討した.移植腫瘍は当教室において胃癌患者より樹立し,20代以上継代している.組織型はIntestinal type 2株,Diffuse type 2株で,免疫組織化学的に全てCEA陽性であった.
これらすべての胃癌株において腫瘍重量と血清CEA値に相関があり,腫瘍増殖にともなって血清CEA値が増加した(相関係数r=0.73~0.91,p≤0.01).腫瘍増殖に伴う血清CEA値の増加率に各胃癌株間で差がみられた.また,すべての胃癌株において腫瘍重量と組織CEA値に相関があり,腫瘍増殖にともなって組織CEA値が増加した(r=0.69~0.81,p≤0.05).組織CEA値の移植後初期の値と腫瘍増殖にともなう増加率に胃癌株間で差がみられた.さらに,胃癌3株において組織CEA値と血清CEA値に正の相関がみられ(r=0.61~0.90,p≤0.05),他の1株でも組織CEA値が高い場合は血清CEA値も高い傾向がみられた(r=0.54,p<0.10).血清CEA値と組織CEA値の比は胃癌株間で分散は等しいが(p<0.05),平均値に若干の差がみられた.
各胃癌株毎のCEA産生の特徴は,Intestinal typeであるNMS6は血清および組織CEA値の両者が高く,Diffuse typeであるNMS12は両者が低く,血清CEA値と組織CEA値の比はやや大きかった.NMS2とNMS11は組織CEA値は高いが血清値は低く,その中間の性質を示した.各胃癌株毎の腫瘍倍加時間と血清および組織CEAの増加率に正の相関が認められ,腫瘍の増殖が早いほどCEA値の増加率が低かった(r=0.90~0.93,p<0.05).以上より,ヌードマウス移植腫瘍では腫瘍増殖にともなって血清および組織CEA値が増加し,血清CEA値は腫瘍重量ならびに組織CEA値に相関するが,むしろ組織CEA値に密接に関連していることが示唆された.

キーワード
胃癌, ヌードマウス, 腫瘍増殖, 血清 CEA, 組織 CEA


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