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日外会誌. 92(8): 1016-1026, 1991


原著

Argonレーザーを用いたTransluminal Laser Angioplasty に関する実験的検討

神戸大学 医学部第2外科

𠮷田 正人 , 岡田 昌義 , 辻 義彦 , 中村 和夫

(1990年8月22日受付)

I.内容要旨
下肢の閉塞性動脈疾患に対する新しい治療法としてArgonレーザーを用いたtransluminal laser angioplastyの実験的研究を行い,その有用性を検討した.Laser probeとしてはBare-ended probe(以下BEP)とMetal tip probe(以下MTP)の2種類を使用し,実験的に,ヒト屍体より得た大動脈および雑種成犬の大腿動脈に作成した器質化血栓に対するレーザー照射の効果を検討した.その結果,まずBEPの使用ではレーザーによる蒸散効果が強く,正常動脈壁に直接接触してレーザーが照射された場合には穿孔を惹起させる危険性があり,これを安全に使用するためには血管内視鏡を併用して,直視下に病変部をレーザー照射することが必要と考えられた.一方,MTPを使用した場合にはBEPと比較して,穿孔の危険性が少なく安全にレーザー照射を行うことが可能であり,金属チップの大きさに応じて十分な血流改善が得られた.またMTPを用いて,同一条件で照射した場合には,金属チップの直径が小さいほどその温度は上昇した.かかる検討の結果,1回照射のレーザーエネルギー量は,金属チップの直径によって変化し,直径2.0mmでは15~25J,直径2.5mmでは30~40Jが至適なエネルギー量であることが判明した.さらに,動脈硬化性病変に対してより適切な治療を行うためには,金属チップの温度をレーザー照射中一定温度に維持することが得策であろうという考えから,金属チップ先端の温度コントロ一ルが可能なMTPを使用し,そのレーザー効果について検討した結果,金属チップの温度が200~300℃の範囲が安全かつ有効な温度であることを立証した.以上のような所見より,Argonレーザーを用いたlaser angioplastyは,照射条件および照射方法を適切に選択すれば安全に施行できて効果も大きく,しかも操作が簡単であることから,今後,閉塞性動脈疾患に対する有力な治療手段になるものと結論された.

キーワード
laser angioplasty, Argon レーザー, 血管内視鏡, 閉塞性動脈硬化症

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