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日外会誌. 92(8): 913-920, 1991


原著

大腸菌静注敗血症ラットモデルにおける肝,脾,肺胞マクロファージ産生tumor necrosis factor(TNF)から解析した肺水腫発生メカニズムの解明

山梨医科大学 第1外科
*) 山梨医科大学 寄生虫学・免疫学教室

井上 慎吾 , 飯室 勇二 , 山本 正之 , 松本 由朗 , 先濱 俊子*) , 田坂 捷雄*)

(1990年8月30日受付)

I.内容要旨
大腸菌生菌をラットに静注後,血中及び分離培養した肝臓,脾臓,肺臓由来のマクロファージの培養上清中TNF活性値を測定し,肺水腫との関連を検討した.血中TNF活性値は対照群に比して非致死量群では,大腸菌静注1時間目に有意に(p<0.01)高値を示し,致死量群ではさらに3時間目まで有意に(p<0.01)高値を持続した.分離した肺胞マクロファージ培養上清中のTNF活性値は,非致死量群,致死量群,対照群の間に有意差はなかった.肝臓,脾臓マクロファージの培養上清中のTNF活性値は致死量群では対照群に比し,すべて有意に低値を示した.非致死量群では対照群に比し活性値は低値を示したが,致死量群よりは高値を示した.血中白血球数は,非致死量群,致死量群とも大腸菌静注6時間目(1,630±410,1,290±690/mm3)で最低値を示し,以後漸増したが,両群間には有意差はなかった.肺乾湿重量差では致死量群12時間目(0.378±0.006)で対照群に比し,有意に(p<0.05)高値を示した.
今回の実験での大腸菌静注時における血中TNF活性値の上昇の成因は肺胞マクロファージではなく,主に肝臓,脾臓マクロファージからのものであり,大腸菌誘発肺水腫の発生には高値遷廷した血中TNFが関係する可能性が示唆された.

キーワード
重症感染症, 臓器障害, TNF, マクロファージ, 肺水腫


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