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日外会誌. 92(7): 847-851, 1991


原著

冠動脈バイパス術と非心臓疾患に対する合併手術の検討

久留米大学 医学部第2外科

磯村 正 , 久富 光一 , 古賀 正之 , 山名 一有 , 木下 寿文 , 小須賀 健一 , 大石 喜六

(1990年7月31日受付)

I.内容要旨
1987年9月より2年6カ月間に施行した冠動脈バイパス術(CABG)のうち,術前に同時に非心臓疾患を指摘された例について両者の外科的治療について検討を行った.対象例は同期間中にCABGを行った120例中8.3%にあたる10例で同時手術を6例に,二期的手術を4例に施行した.非心臓疾患の内訳は,血管病変6例,胃癌3例,胆石症1例であった.術前の左室造影よりみた左室駆出率は,同時手術例で0.73±0.07,二期的手術例で0.47±0.11で,二期的手術例ではいずれも心筋梗塞の既応があった.CABG本数は,同時,二期的手術例で,それぞれ2.2±0.8枝,2.8±0.5枝であり,8例に動脈系グラフトの使用を行った.総体外循環時間(総手術時間)は,同時あるいは二期的手術例でそれぞれ93±33分(361±49分)あるいは,136±30分(開心術380±36分,非開心術388±83分)であり,二期的手術例では開心術に長時間を必要とした.同時手術例では原則として体外循環終了後,止血を十分に行い,血管病変合併例では開胸のまま,消化器病変合併例では閉胸を完全に行ったのち,同時手術を行った.二期的手術例では平均105日後に非心臓疾患に対する手術を行い,全例術後経過は良好で合併症は認めなかった.冠動脈疾患,非心臓疾患ともに外科的手術の適応として認められる例では原則としてCABGを優先すべきと考え,術前心機能良好例では開心術後の心機能が問題なくかつ十分な時間的余裕がある例では積極的に同時手術を行うべきであると考えている.しかし,進行癌,心機能不良例では二期的手術により,両者に対して十分に外科治療を行うことができ良好な手術成績が得られるものと考えている.

キーワード
冠動脈バイパス術, 非心臓疾患, 同時手術, 二期的手術


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