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日外会誌. 92(7): 837-846, 1991


原著

食道静脈瘤直達手術後の胃排出能と消化器症状の関連について
ーDouble Isotope Methodを用いてー

東京大学 医学部第2外科

小山 広人

(1990年7月23日受付)

I.内容要旨
消化器症状の基礎にあると考えられる胃排出能を健常群5例,食道静脈瘤術前群6例,食道静脈瘤直達手術後1~47ヵ月の23例(経腹的食道離断術16例,Hassab手術7例)について,99mTc-スズコロイド及び111In-DTPAを用いたdouble isotope methodにより通常の食事に近い状態で固形食・液体食同時に測定した.
1/2胃排出時間(T1/2)は,液体食では,健常群で47.6±13.9分(n=5),術前群で28.3±6.4分(n=6),直達手術後群で51.1±32.7分(n=23)であり,固形食では,健常群で83.1±11.2分,術前群で98.5±19.1分,直達手術後群では94.7±55.5分であった.直達手術後群では,排出状況を時間経過でみると,液体食では試験後半で排出が遅くなり,一方固形食では前半に於て排出の速まりが認められた.術後の胃排出は,術後経過期間による一定の傾向は認められず,また,基礎疾患,肝機能障害度との間にも有意な関連は認められなかった.血行遮断,迷走神経切離,幽門形成術などの手術操作によって決定されることが窺われ,これらが,直達手術の胃排出が症例により広い範囲に分布する一因を成していると考えられた.
また,直達手術後の胃排出能と,ダンピング全身症状,胃部停滞感,下痢,体重減少などとの間に関連を認め,各症状に於ける固形食・液体食の胃排出の関与の差も示唆された.
今回の検討では,迷走神経切離などを含めた術式の細部と,胃排出能との関連については明確にすることはできなかったが,今後は,本研究を基にこの点を明らかにすることにより,一部の症例でみられる術後の消化器症状を減少させ,静脈瘤に対する良好な長期成績とあいまって,術後のquality of lifeをさらに改善することが可能であると考えられる.

キーワード
胃排出能, Double Isotope Method, 食道静脈瘤直達手術


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