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日外会誌. 92(7): 794-806, 1991


原著

両側開胸による食道亜全摘術後早期の呼吸循環動態変化に関する実験的研究

久留米大学 医学部第1外科(指導:掛川暉夫教授)

小野 崇典

(1990年7月14日受付)

I.内容要旨
雑種成犬28頭を用い,右肋間開胸による胸部食道癌根治術モデル14頭と,右肋間開胸に左肋間開胸を付加した両側開胸による胸部食道癌根治術モデル14頭の2群を作成し,術後12時間までの呼吸循環動態変化について比較検討したところ,次の結果を得た.
1)右開胸群と両側開胸群の術後早期の呼吸循環動態変化を比較すると,肺粘性抵抗(RL)にのみ有意差を認めた.
2)術中,術後の総輸液量は,右開胸群9.1±1.3ml/kg/hr,両側開胸群10.6±1.5ml/kg/hrと有意に両側開胸群が高値を示した.
3)術後12時間までの心拍出量(CO)が術前値に比べて30%以上低下したものは右開胸群では7頭,両側開胸群では6頭であった.
4)右開胸群で,CO低下30%未満群(n=7)とCO低下30%以上群(n=7)の術後の呼吸循環動態を比較すると,CO低下30%以上群の左室1回仕事量係数(LVSWI),左室分時仕事量係数(LVWI),右室1回仕事量係数(RVSWI),右室分時仕事量係数(RVWI),血漿膠質浸透圧(COP),血漿膠質浸透圧一肺動脈楔入圧較差(COP-PWP gradient),輸液量は有意な低値を示し,末梢血管抵抗係数(TPR),肺血管抵抗係数(PVR)は有意な高値を示した.
5)両側開胸群で,CO低下30%未満群(n=8)とCO低下30%以上群(n=6)との術後の呼吸循環動態を比較すると,CO低下30%以上群の脈拍,TPR,PVR,血管外肺内水分量(EVLW)は有意な高値を示し,LVWI,RVWI,肺コンプライアンス,COP,COP-PWP gradient,輸液量は有意な低値を示した.
6)COの低下が30%未満の右開胸群(n=7)と両側開胸群(n=8)との術後の呼吸循環動態を比較すると,両側開胸群では右開胸群に比べて,LVSWI,LVWI,COP-PWP gradientは有意な低値を示し,RL,輸液量は有意な高値を示した.

キーワード
両側開胸, 胸部食道癌根治術, 血管外肺内水分量, 呼吸循環動態変化

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