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日外会誌. 92(7): 775-784, 1991


原著

5-FU 組織内濃度と Angiotensin-Ⅱ 併用癌化学療法の臨床的研究

国立仙台病院 外科(指導:菊地金男名誉院長)

髙橋 直典

(1990年7月14日受付)

I.内容要旨
Angiotensin-Ⅱ(AT-Ⅱ)の投与法を検討する目的で,抗腫瘍剤単独静注(A)群,昇圧静注(B)群,抗腫瘍剤単独動注(C)群,昇圧動注(D)群,抗腫瘍剤とAT-Ⅱ混合動注(E)群を設定,各群5例の胃癌症例を対象に,手術時5-FU 250mgを投与し,摘出胃の正常粘膜層,漿膜層,腫瘍部,所属転移リンパ節の組織内5-FU濃度を測定した.正常粘膜層の平均値は,A群0.19mcg/g(以下/g略),B群0.17mcg,C群2.31mcg,D群0.60mcgに対し,E群では15.43mcgと高値を示した.腫瘍部はA群0.20mcg,B群0.92mcgで,両群間に有意差があり,C群4.82mcgと,D群20.59mcgの間でも有意差が認められ,E群は224.06mcgで,D群間に有意差があった.所属転移リンパ節はA群0.12mcg,B群0.17mcg,C群1.83mcg,E群16.10mcgに対してD群は48.44mcgと有意に高値を示した.漿膜層はA群0.05mcg,B群0.07mcg,C群2.27mcg,D群4.69mcgで,E群は66.50mcgの高値であった.腫瘍部と正常粘膜層との5-FU濃度比(T/N)は,E,D,B,C,A群の順に高く,B群はA群に比し高く,D,E群と他群間には有意差が認められた.進行・再発癌93例を対象にAT・Ⅱ併用療法について投与法別に有効性を検討した.奏効率はB群17%,D群41%,E群24%であり,平均生存期間はB群6.3ヵ月,D群9.6ヵ月,E群14.2ヵ月であった.AT-Ⅱの副作用は,頭痛,胸痛,悪心等で出現率8%以下,いずれもAT-Ⅱ投与中止後速やかに回復した.AT-Ⅱの併用は,T/Nの上昇を招き,抗腫瘍効果を増強する.特に昇圧動注法は,所属リンパ節薬剤濃度も有意に高く,奏効率も高率であった.局所的AT-Ⅱ混合動注法は,AT-Ⅱ投与量の僅かな差による血圧変動が著しく,また薬剤のリンパ節への移行が少なく,正常組織では過剰となる欠点はあるが,腫瘍組織への到達性が高く,適応の制限により延命効果が期待できる.

キーワード
Angiotensin-Ⅱ, 昇圧癌化学療法, 動注療法, 5-FU 組織内濃度, 臨床効果

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