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日外会誌. 92(7): 771-774, 1991


原著

ドナーの臓器機能維持には dopamine が最適か?

大阪大学 医学部救急医学

木下 順弘 , 八幡 孝平 , 岡本 健 , 吉岡 敏治 , 杉本 侃

(1990年8月16日受付)

I.内容要旨
臓器移植までの極く短期間,ドナー管理を行うだけでよい欧米諸国では,脳死後の詳しい臓器機能を評価されることもないまま,ドナーの循環維持にdopamineを使用するように推奨されているが,国内の現状は脳死後直ちに臓器提供が行われるとは考えられず,少なくとも数日間の循環管理を余儀なくされることであろう.しかし,カテコールアミン単独では48時間以上の循環維持は困難であり,当科で開発したarginine vasopressinとカテコールアミンを同時投与する循環維持方法の応用が期待される.そこで,本研究では脳死後6日間以上循環を維持した50歳以下の症例で,循環維持法にarginine vasopressinとepinephrineを併用投与した10症例(E群)とdopamineを併用投与した10症例(D群)を対比して,腎,肝の臓器温存に何れがより適切であるかを検討した.arginine vasopressinは0.03~0.3mU/kg/minの範囲の一定量で持続静脈内投与し,併用したカテコールアミンは平均血圧80mmHgを目安に投与量を適宜調節した.その結果,血清BUN,血清クレアチニン,クレアチニンクリアランスはおよそ2週間にわたりそれぞれ正常域にあり,腎機能は何れの群でも良好に保たれ,1日尿量はD群のほうが多めであった.肝機能では,E群の脳死後7日目には,GPT 47±33U/l,総ビリルビン4.4±6.8mg/dl,コリンエステラーゼ1,961±408U/l,アルカリフォスファターゼ283±101U/lと肝細胞障害は認められないものの,軽度の黄疸と胆道系酵素の逸脱を認めた.D群でもGPT,コリンエステラーゼ,アルカリフォスファターゼに差はなく,総ビリルピンのみ3.0±2.1mg/dlと黄疸の程度がやや軽かった.結論として,腎機能はカテコールァミンによらず良好に機能が保持され,肝機能についてもGPTやコリンエステラーゼの指標には明らかな差異を見いだし得なかったが,黄疸の進行はD群のほうがやや優れていると考えられた.

キーワード
arginine vasopressin, ドナー, epinephrine, dopamine, 臓器保存


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