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書誌情報]
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日外会誌. 92(6): 734-739, 1991
原著
同系統間輸血が腫瘍の転移に及ぼす影響
ーLewis 肺癌モデルを用いた実験的研究ー
I.内容要旨輸血が癌切除手術の予後を悪くするという臨床報告がみられ,動物実験でも累系統間の輸血が腫瘍の発育及び転移を助長すると報告されている.本研究では同系統動物から得た保存血球の輸注が腫瘍の転移にいかなる影響を及ぼすかを検討した.B
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1マウスを3群に分け,それぞれ同系統マウスより採取し16~19日間4℃に保存した血球,同系統マウスよりの新鮮血球,生食を輸注する群として以下の実験を行った.腫瘍はマウスの皮下に継代培養されたLewis肺癌を用い,肺及び肝転移の評価は肉眼的に計測した腫瘍の個数と
125I-deoxyuridine(IUdR)の取り込みによった.実験1:血球または生食輸注の約4時間後,1×10
6個のLewis肺癌細胞浮遊液を尾静脈より注入して生死予後を観察した.腫瘍細胞静注後の生存率は生食群,新鮮血球群,保存血球群の順に有意に低下し(p<0.001),50%生存期間はそれぞれ30.3,24.0,19.2日であった.さらに腫瘍細胞静注後15~24日目に犠牲死せしめ,肺および肝への転移を比較すると,生食群,新鮮血球群,保存血球群の順に転移は高度となり,15~17日目には保存血球群と他の2群との間に,また23,24日目には新鮮血球群と生食群との間に有意差を認めた.実験2:1×10
5個の腫瘍細胞浮遊液をマウスの足底部皮下に接種した後21日目に左下腿切断により腫瘍を切除し,10分後に血球または生食を輸注した.切除後8~11日目に犠牲死せしめ肺への転移を比較検討した.保存血球群における腫瘍切除後9,11日目の肺転移個数は新鮮血球群,生食群に比較し有意に多かったが,IUdRの取り込みには明らかな差はみられなかった.
結論として同系統マウスから得た保存血球の輸注は,腫瘍細胞静注後の人工的転移形成を著しく促進し,さらに原発巣からの自然肺転移も促進する傾向を示した.したがって,輸血用血液中のnonviableな血球成分が腫瘍切除後の予後を悪くする可能性が示唆された.
キーワード
輸血, 保存血, 同系統間輸血, Lewis 肺癌, 転移
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