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書誌情報]
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日外会誌. 92(6): 722-726, 1991
原著
冠動脈バイパスグラフト内の血流分析;内胸動脈グラフトと大伏在静脈グラフトの比較
I.内容要旨本邦人でも冠動脈再建術に次第にIMAGが用いられるようになっている.今回我々は,ドプラカテーテルを用いて,SVGとIMAGの血流分析を行い,術後早期における両者の比較を行った.対象は1988年6月より12月までにLADへCABGを施行した15例で,LADへのグラフトにSVGを用いたもの7例,IMAGを用いたもの8例である.平均末梢吻合箇所は2.3±0.5,男女比はSVG群が男4例女3例,IMAG群では男7例女1例であった.平均年齢はSVG群が64.3歳,IMAG群が62.1歳であった.造影からグラフトの内径を測定し,冠動脈流速波形は最も安定した信号が得られる箇所で測定した.グラフト内流速波形から収縮期および拡張期のpeak流速,平均流速,グラフト平均流量,peak流速の拡張期/収縮期比(D/S),波形が描く面積のD/S比,平均血流速度のD/S比を算出した.グラフトの断面積はSVGが13.3±8.4mm
2とIMAG(6.0±1.2mm
2)より太かった.peak流速は収縮期(SVG;6.3±1.7,IMAG;12.7±8.6cm/sec),拡張期(SVG;9.9±2.7,IMAG;15.9±8.9),平均流速(SVG;6.7±1.8,IMAG;12.1±6.4)ともにSVG群が有意に低い値を示した(p<0.05).グラフト流量はSVG群(46.2±14.8ml/min)とIMAG群(40.2±13.5ml/min)に差が無かった.D/S比はpeak流速(SVG 1.6±0.3,IMAG 1.4±0.4),平均流速(SVG 1.5±0.3,IMAG 1.4±0.4),面積(SVG 2.0±0.4,IMAG 2.7±0.9)ともに両群間に差は無かった.以上からIMAG群では流速は大きいものの,両群間のコンプライアンス効果には差がなく,今回の検討では少なくとも術後早期のIMAGの優位性を示唆する所見は得られなかった.
キーワード
カテーテル先端型ドプラ血流計, 内胸動脈グラフト, 静脈グラフト, 冠動脈グラフト内血流波形, 冠血流拡張期収縮期比
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