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日外会誌. 92(6): 664-671, 1991


原著

大腸癌の血行性転移再発高危険例
ー臨床病理学的所見並びに血中腫瘍マーカー CEA, CA19-9測定値からの検討ー

1) 三菱神戸病院 外科
2) 神戸大学 医療技術短期大学部
3) 神戸大学 医学部第1外科

出口 浩之1) , 多淵 芳樹2) , 斎藤 洋一3)

(1990年6月6日受付)

I.内容要旨
大腸癌の血行性転移再発高危険(high risk)症例を明らかにする目的で,腫瘍還流血(d)および末梢血(p)中CEAとCA19-9を定量した切除大腸癌78例を対象として,転帰別に無再発健存例50例(健存群)と血行性転移再発28例(血再群)に分類し,2群間における臨床病理所見並びに血中CEA,CA19-9値との関連性を検討した.
臨床病理学的因子10項目との検討では,健存群と血再群との間に有意な関連が認められた項目は壁深達度・リンパ節転移・リンパ管侵襲・静脈侵襲程度と侵襲部位およびstage分類であった.これら6項目のうち単一因子として最も血再群と関連が深い項目は静脈侵襲部位で,健存群のv0ないし粘膜下・筋層内v(+)は78%と血再群の18%より有意に高率であったが,それに対し漿膜下,壁外v(+)は前者22%,後者82%と血再群が有意に高率であった.腫瘍マーカーの検討では,CEAはすべての原発病巣での産生が確認され,p-CEAとd-CEAの平均値(ng/ml)と5ng/ml以上の陽性率はそれぞれ健存群6・22%,14・48%,血再群43・61%,198・96%と後者の平均値と陽性率は前者よりも有意に高値を示した.またd-pCEA較差5ng/ml以上の症例は健存群34%・血再群は82%と,後者が有意に高率であった.CA19-9は70%の原発巣に産生されていたが,その産生率には両群間に差はみられなかった.CA19-9産生癌においては,pとd-CA19-9値はほぼ同値を示し,血再群の平均値(U/ml)と37U/ml以上の陽性率は982・94%と健存群の25・11%よりも有意に高値を示した.
以上の成績より,大腸癌における血行性転移high risk症例は臨床病理学的には漿膜下・壁外静脈侵襲例であり,腫瘍マーカー上d-CEA 5ng/ml以上特にd-pCEA較差5ng/ml以上の症例並びにp-CA19-9 37U/ml以上の症例であると言える.

キーワード
大腸癌, 血行性転移再発, 静脈侵襲, carcinoembryonic antigen (CEA), carbohydrate antigen (CA) 19-9

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