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日外会誌. 92(5): 598-602, 1991


原著

DNA ploidy パターン別の原発性肺癌の増殖能の検討

1) 長崎大学 医学部第1外科
2) 現 大分県立病院 胸部血管外科

山岡 憲夫1)2) , 田川 泰1) , 宮下 光世1) , 綾部 公懿1) , 川原 克信1) , 内山 貴堯2) , 富田 正雄1)

(1990年3月23日受付)

I.内容要旨
固形癌の核DNA量解析においてDNA aneuploid例がDNA diploid例に比べて予後不良であり,悪性度が高いとの報告が多い.この原因として細胞内RNA量やTumor doubling timeなどの増殖能の面よりDNA ploidyパターン別に検討を試みた.
対象は原発性非小細胞癌切除66例で手術時の新鮮摘出標本より癌細胞を分散しAcridine Orange染色法でFlow cytometryを用い細胞内DNA量RNA量を解析した.33例でTumor doubling timeの計測が行えた.
DNA diploid例は10例15.2%,DNA aneuploid例は56例84.8%とその頻度は高率であったが病期別に差はなかった.細胞内RNA量はDNA diploidy 10例のRNA Index値の平均値は3.26±1.08,DNA aneuploidy 56例のそれは4.69±1.27で,有意(p<0.05)に後者の細胞内RNA量は増大していた.I,II期39例も同様であった.Tumor doubling timeはDNA diploidy 6例で212.8±96.3日,aneuploidy 27例で88.7±37.6日で,後者は前者に比べて有意(p<0.05)にTumor doubling timeは短かった.術後1年以内の早期再発例はDNA diploid例11.1%のみだが,DNA aneuploid例36.4%と高い傾向を認めた.
以上の結果より,DNA aneuploid例はDNA diploid例に比べてより増殖活性が亢進し,より盛んに増殖していることが判明した.DNA aneuploid例がDNA diploid例より再発しやすい原因の一つとしてこれらの癌細胞の増殖能の差が考えられた.

キーワード
原発性肺癌, DNA 量, RNA 量, 増殖能, Tumor doubling time


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