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日外会誌. 92(5): 592-597, 1991


原著

肺癌細胞と線維芽細胞の in vitro および in vivo における相互作用

*) 県立愛知病院 外科
**) 名古屋大学 医学部胸部外科

内田 達男*) , 榊原 正典**) , 今泉 宗久**) , 阿部 稔雄**)

(1990年5月23日受付)

I.内容要旨
線維芽細胞は数種類のファクターを合成・分泌することが知られているが,癌細胞と線維芽細胞間の複雑なinteractionについては明らかにされるべき多くの問題が残されている.そこで肺癌組織より得られた線維芽細胞を用い,in vitroおよびin vivoの肺癌細胞に対する線維芽細胞の影響につき検討した.用いた肺癌培養細胞は8種類,肺癌組織由来の線維芽細胞は12種類で非担癌肺組織由来の線維芽細胞は2種類であった.これらの線維芽細胞培養液を肺癌細胞に加え,肺癌細胞に対する増殖促進効果をMTTを用いたcolorimetric assay法により判定した.さらに肺癌細胞に線維芽細胞培養液あるいは線維芽細胞を混ぜヌードマウス皮下に移植し,腫瘍増殖促進効果と腫瘍生着率への影響を検討した.結果は,肺癌細胞8種類のうち4種類がいずれかの線維芽細胞培養液により増殖が促進され,EGFなどに対する反応も同じ傾向であった.線維芽細胞の半数は肺癌細胞増殖促進効果を有し,この効果は非担癌患者肺組織由来の線維芽細胞培養液でも認められたが,腫瘍抑制効果はみられなかった.in vitroで認められた線維芽細胞培養液の肺癌細胞増殖促進効果は,ヌードマウス移植腫瘍でも同じ効果がみられた.癌細胞と線維芽細胞のヌードマウスへの混合接種では腫瘍生着率は向上したが,肺癌細胞や線維芽細胞の種類には関係がなかった.以上よりin vitroにおいて認められる一部の線維芽細胞が有する肺癌細胞増殖促進効果を調べることは,in vivoにおける腫瘍内線維芽細胞の働きを予測しうる可能性がある.線維芽細胞は肺癌細胞のヌードマウス移植時に腫瘍細胞に好都合な環境作りに寄与するが,growth factorとは異なる作用によるものであった.

キーワード
肺癌細胞, 線維芽細胞

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