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日外会誌. 92(4): 374-380, 1991


原著

腹膜手術侵襲によるマクロファージの活性化

山形大学 医学部第2外科
*) 南カリフォルニア大学 リビングストン研究所

深沢 学 , 折田 博之 , 島貫 隆夫 , 阿部 寛政 , Gere S diZerega*) , 鷲尾 正彦

(1990年4月21日受付)

I.内容要旨
術後腹膜治癒過程は線維性増殖性炎症反応の一つであり,その過程においてマクロファージは重要な働きをしていると考えられる.そこで,家兎腹膜損傷モデルを用い,開腹術後腹膜治癒過程における腹腔マクロファージの代謝活性を測定し,手術侵襲によるマクロファージの活性化について検討した.
New Zealand White rabbit(2kg)に対し,開腹後,回腸切除(2cm)・吻合術を施行し,術後経時的に再開腹を行い腹腔洗浄にて腹腔浸出細胞(PEC)を回収した.回収されたPECより,Percollにてマクロファージを分離し,M-199培養液にて48時間培養した後に培養液を回収した.
術後第1から3病日の腹腔マクロファージは非手術コントロール腹腔マクロファージに比し有意に高いプラスミノーゲンアクティベーター・インヒピター活性(コントロール:141.4±89.5;DAY1:15.2±2.3% of 12.5mPU/ml standard UK活性)を示した.術後時間経過と共にこの活性は低下し術後10日目(62.8±10.6%)にコントロールレベルに戻った.またプラスミノーゲンアクティベーター活性は術後早期のマクロファージで低値を示し,その後増加しコントロ一ルレベルに戻った(control:5.1±1.5;day1:0.64±0.46;day7:5.6±3.0mPU/ml).
Superoxide Anion産生能においても術後マクロファージにおいて増加がみられたがマクロファージ培養液のエラスターゼ活性は術後経過とともに低下した.
このように,術後マクロファージは手術侵襲により活性化されると考えられるが,分泌物あるいはパラメーターにより異なった活性を示した.これは術後侵襲という刺激に依存したマクロファージの活性化と分化の過程を示しているのかもしれない.

キーワード
術後マクロファージ, 腹膜治癒


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