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日外会誌. 92(3): 339-345, 1991


原著

ラット部分肝切除後の肝再生に及ぼす superoxide dismutase の影響

近畿大学 医学部第2外科

福西 健至

(1989年9月12日受付)

I.内容要旨
約70%肝切ラットにsuperoxide dismutase(SOD)の投与を行い,SODの肝再生に及ぼす影響を検討した.肝再生時における肝組織過酸化脂質は術後1,2日目においてSOD投与群はcontrol群に比べ有意に低下し,特に術後1日目control群14.86±2.28(nmol/mg protein)に対しSOD投与群は12.14±2.38(nmol/mg protein)と有意な抑制が見られた(p<0.01).肝重量再生率は,術後4日目以降control群に比しSOD投与群が有意に高値を示し(p<0.05),再生の完了する術後4週目ではcontrol群101.9±8.9%に対し,SOD投与群は117.8±13.9%と有意に上昇した(p<0.05).動脈血中ケトン体比(KBR)はcontrol群とSOD投与群の間に有意な差を認めなかった.血清トランスアミナーゼは,術後1,2日目においてSOD投与群はcontrol群に比べ有意に低下した.特に術後2日目においてGOTはcontrol群330.7±181.6KUに対し,SOD投与群205.4±66.4KU,またGPTはcontrol群143.7±88.5KUに対し,SOD投与群では86.5±36.5KUと有意な改善を認めた(p<0.01).
Mitotic indexは両群とも,術後2日目に最高値を示したが,control群25.3±6.5に対し,SOD投与群では34.1±3.4と有意に上昇した(p<0.01).
以上のことから,肝再生時にはsuperoxide anionによる障害が起こることが示され,それに対するSODの投与は,エネルギー状態には影響しないものの,肝再生に障害を及ぼす過酸化脂質の増加を抑制することにより残存肝機能再生を保護し,細胞分裂を活発に行い肝再生を促進することが明らかとなった.

キーワード
SOD, 過酸化脂質, 肝再生, 活性酸素, free radical


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