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日外会誌. 92(3): 293-302, 1991


原著

Biological Response Modifier(BRM)の胃癌病巣周囲への局所注射による所属リンパ節内リンパ球の免疫能の変動

横浜市立大学 医学部第2外科学教室(指導:土屋周二教授)

小尾 芳郎

(1990年2月17日受付)

I.内容要旨
胃癌手術例66例について,局所および所属リンパ節の免疫応答を増強させるため,術前に内視鏡的にBRM(OK-432またはLentinan)を胃癌病巣周囲に局注し,これらの手術時に摘出した所属リンパ節内リンパ球について,T-細胞各種亜群,IL2産生能,IL-2に対する反応性を測定した.
①BRMの局注を行なわなかった対照の転移陽性のリンパ節では,リンパ節転移陰性症例のリンパ節に比べて,CD3,CD4各陽性細胞比率やIL2産生能が低かった.また,転移陽性リンパ節ではOK-432やLentinanを局注した後もT-細胞各種亜群の構成比率やIL-2産生能,IL-2に対する反応性は変化しなかった.
②リンパ節転移陰性症例の各リンパ節や,リンパ節転移陽性症例の主病巣から離れた転移陰性リンパ節では,OK-432局注によりCD44B4細胞(helper inducer T-cell)が,Lentinan局注によりCD8CDII-細胞(cytotoxic T-cell)が増加し,両者ともにIL-2産生能が上昇していた.また,リンパ節転移陽性症例の病巣の近くの転移陰性リンパ節では,OK-432やLentinanを局注してもT-細胞各種亜群やIL-2産生能,IL-2に対する反応性は変化しなかった.
以上から,手術前にこれらのBRMの癌病巣周囲への局注は,転移のないリンパ節の免疫応答を増強すると思われた.また,OK-432とLentinanとでは免疫応答への賦活機序は異なるものと思われた.

キーワード
胃癌, 胃癌所属リンパ節, 胃癌のOK-432局注, 胃癌の Lentinan 局注, 胃癌リンパ節の T-細胞亜群

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