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日外会誌. 92(2): 181-186, 1991


原著

硬変肝切除例における血中 protease inhibitor および急性相反応物質の変動

大阪府立成人病センター 外科

柴田 高 , 佐々木 洋 , 今岡 真義 , 永野 浩昭 , 大橋 一朗 , 石川 治 , 岩永 剛

(1989年12月27日受付)

I.内容要旨
硬変肝切除時における血中protease inhibitorおよび急性相反応物質の変動について検討する目的でA群肝硬変合併肝切除例(n=19),B群非肝硬変肝切除例(n=6), C群非肝硬変肝切除以外手術例(n=5)を対象とし,術前術後の血中α1-antitrypsin(α1AT),α2-macroglobulin(α2MG),pancreatic secretory trypsin inhibitor(PSTI),urinary trypsin inhibitor(UTI)およびC-reactive protein(CRP)を測定した.術前の血中protease inhibitor値の検討では肝硬変群A群は,非肝硬変群B,C群に比してα2MG値は高値, UTIは低値を示し,α1AT, PSTI値は明らかな差は認められなかった.また術前α2MG値およびUTI値は術前肝機能(ICGR15,血中アルブミン値)と有意な相関関係が認められた.手術時間,術中出血量,切除肝重量に差を認めないA群,B群の術後血中の急性相反応物質を比較した.α1AT, CRPは肝切除後1日目で上昇を示し術後3日目でピークを形成したがB群の上昇はA群の上昇に比し有意(p<0.01)に高値を示した.肝硬変の有無別におけるこれら急性相反応の違いを明らかにする目的で術後3日目のα1AT,CRP値と手術時間,術中出血量,切除肝重量,術前ICGR15と比較した.これらα1AT,CRP値とは術前ICGR15とのみ相関関係(r=-0.593;p<0.01,r=-0.483;p<0.05)が認められた.またPSTI値は術後上昇を示すも両群間で差は認められなかった.
血中protease inhibitorの中で術前α2MG,UTI値は肝機能の一指標として有用であると考えられ,また硬変肝切除時にはα1AT,CRPをはじめとする血中での急性相反応物質の応答は術前肝機能に依存する割合が大きいと考えられた.

キーワード
肝硬変, 肝切除, 蛋白分解酵素阻害物質, 急性相反応物質


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