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日外会誌. 92(2): 150-159, 1991


原著

Microwave Tissue Coagulator による肝切除後再生能に及ぼすFructose-1,6-Diphosphate の促進効果

和歌山県立医科大学 消化器外科

中井 健裕 , 谷村 弘 , 田伏 克惇 , 永井 祐吾 , 森 一成 , 矢本 秀樹

(1989年11月4日受付)

I.内容要旨
Microwave Tissue Coagulator(MTC)の肝切除後再生能に及ぼす影響と,heat injuryに対するFructose-1,6-diphosphate(FDP)の肝再生促進効果を,ラットの40%肝部分切除を用い基礎的に検討した.
MTCの肝再生に及ぼす影響は,中間葉をMTCにより切除する群(MTC群)を,絹糸にて結紮切除する単純結紮群と比較すると,血清逸脱酵素値では,LDHが術後2日目に727±148,466±140とMTC群が有意に高かった.残存中間葉の断端部からの距離による再生能の変化をDNA合成能,蛋白合成能,labeling index(LI)により検討した結果, DNA合成能では,辺縁部にのみ差を認め,特に肝切除後2日目では433±50dpm/µg DNAと対照の782±111dpm/µg DNAよりMTC群が強く抑制された.蛋白合成能やLIでも同様の傾向であった.
この成績に基づいて,FDPの術前投与を行うと,術後2日目にみられた逸脱酵素の上昇は完全に抑制された.また,DNA合成能では辺縁部において生食投与群, FDP 0.25mmol/kg投与群,FDP 0.8mmol/kg投与群の値がそれぞれ422±52,783±112,912±115dpm/μgDNAであり,FDP術前投与により有意に高くなり,蛋白合成能やLIでも同様であった.したがって,MTCによる肝部分切除では,術後2日目の障害が強いが,FDPの術前投与によりそれが回避され,FDPには肝細胞保護および肝再生促進効果があることが明かとなった.

キーワード
Fructose-1,6-diphosphate, マイクロ波凝固装置, DNA 合成能, 蛋白合成能, 抗 BrdU モノクロ-ナル抗体


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