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日外会誌. 92(2): 122-126, 1991


原著

胃癌の核 DNA ploidy patternとhuman epidermal growth factor (上皮増殖因子)発現の関連性

福井医科大学 第1外科

広瀬 和郎 , 荒井 理夫 , 中川原 儀三

(1990年1月23日受付)

I.内容要旨
胃癌手術症例93例における上皮増殖因子(human epidermal growth factor,以下EGF)の発現を,プロテアーゼ前処理を加えたBiotin-Strept Avidin法を用いて免疫組織学的に検索し,胃癌の進展,および,DNA ploidy patternとの関係を検討した.胃癌の核DNA量は顕微蛍光測光法により測定し,stem cellのDNA量によりploidy patternをdiploid(二倍体)とaneuploid(異倍体)に分けた.その結果,胃癌におけるEGFの発現は,粘膜内癌のうちから認められ(5/20例,25%),必ずしも深達度が深くなるほどEGFの陽性率が増加するとは言えなかった.ploidy patternとの関係を検討すると,diploidの癌では, EGFの陽性率は早期癌(11/28例,39%)と進行癌(9/31例,29%)で有意な差異を認めなかった.しかし,aneuploidの癌のEGFの陽性率は,進行癌では15/22例(68%)であり,早期癌(2/12例,17%)に比べて有意に高かった(p<0.01).また,aneuploidの進行癌は, diploidの進行癌に比べEGFの陽性率が有意に高かった(p<0.01).すなわち.DNA量が異常に増加したaneuploidの胃癌では,早期癌から進行癌へと進展していく過程でEGFの発現が増加し.DNAの合成が促進されると考えられたが,diploidの癌ではこのような傾向は見られなかった.
以上の結果より,aneuploidを呈する進行胃癌への発育進展には, EGFの発現の増強によるDNAの合成の促進が関連していることが示唆された.

キーワード
胃癌, DNA ploidy pattern, diploid, aneuploid, epidermal growth factor


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