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日外会誌. 92(1): 64-74, 1991


原著

乳癌の肝転移に対するOK-432大量局注とrIL-2肝動注による
免疫療法の効果とその機序

東北大学 医学部第2外科
東北大学 歯学部微生物

秋元 実 , 西平 哲郎 , 平川 久 , 阿部 基 , 大内 憲明 , 森 昌造 , 熊谷 勝男

(1989年11月9日受付)

I.内容要旨
乳癌の多発性肝転移に対して,in vivo Killerを誘導する目的で,Cyclophosphamide(CY),OK-432,rlL-2を用いた免疫療法を行ない,施行した3例すべてにCT上PRの効果を認めた.C3H/Heマウスに腹水肝癌MH-134を移植した系では,CY 150mg/kgを前投与しOK-432,rIL-2を腹腔投与する方法で,それぞれ単独投与あるいは他の組み合わせに比し有意の腫瘍縮小効果が得られた.また,ヒトリンパ球をOK-432終濃度0.02KE/mlで培養すると,CD2+CD4CD8の幼若化した細胞が増殖し,培養5日後よりCD25陽性のIL-2 Receptorを有する分画が上昇することが確認された.OK-432添加培養群では,非添加群に比べて,細胞増殖数で10倍以上,K-562に対する全活性は40~200倍に達した.
臨床例3例は,いずれも乳癌多発肝転移で内分泌,化学療法に反応しない症例に施行した.CY100mg/dayの経口投与(14日間)後に,OK-432 0.5KEを3日間静注,その翌日に開腹手術しOK-432 300KEを腫瘍内投与し,術後7日よりrIL-2 105u/dayを肝動脈ラインより持続的に10~14日間投与した.CT上は,術後2~4週で著明な腫瘍縮小効果が認められ,術後3ヵ月では,1例がCT上,病理学的に腫瘍消失,2例に70%以上の縮小効果が得られた.腫瘍マーカーは,CEA,CA15-3ともに術前の高値から,2例は正常域に,1例は50%以上の低下が認められた.末梢血中のNK,LAK活性は手術後比較的早期より著明な上昇傾向を認め,リンパ球PhenotypeではCD2+CD4CD8CD16+分画の上昇傾向が認められた.
以上より,in vitroでリンパ球を培養する操作なしに,in vivoでkiller活性を誘導ししかもかなりの抗腫瘍効果が期待できる可能性が示唆された.

キーワード
乳癌, 肝転移, 免疫療法, rIL-2


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