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日外会誌. 91(12): 1784-1795, 1990


原著

肝部分切除マウスにおける同種移植免疫応答の解析

東北大学 医学部第2外科(主任:森 昌造教授)

天田 憲利

(1989年10月30日受付)

I.内容要旨
肝は部分切除などにより障害を受けると,旺盛な分裂増殖を開始するとともに,全身の免疫系組織の活性化が起こる.一方,臨床的に,肝移植や腎移植後の肝障害が,同種移植片拒絶に抑制的に働いていることを示唆する報告も散見される.
今回著者は,同種移植免疫応答に及ぼす肝障害の影響を解析する目的で,肝障害後の免疫学的変動を追跡する上で有用なモデルとして肝部分切除(PH)マウスを用い,肝再生過程における同種移植抗原に対する反応性を検討した.
PH後に同種皮膚移植を行うと,抗リンパ球血清処置マウスでは,対照群に比して移植片の生着日数は延長し,PH後5~8日目に移植するともっとも延長効果を認めた.同様に,同種足蹠腫脹反応による細胞性免疫応答も低下していた.免疫抑制活性の指標となる液性因子として,血清中の免疫抑制酸性蛋白(IAP)を測定すると,PH後8日目をピークに高値を示した.さらに,PHマウス脾細胞を用いて免疫学的変動を解析すると,同様にPH後8日目をピークに脾細胞は活性化し,その活性の中心はマクロファージにあり,同様のkineticsでFcレセプターや補体レセプター発現の増強が認められた.この活性化した脾マクロファージを同種脾細胞混合培養の系に付加するとallo-CTL誘導が抑制されるのに対し,付加する脾細胞からマクロファージを除去するとallo-CTL活性は抑制されないことから,in vivoで同種免疫応答に抑制的に働くメカニズムのひとつに,肝再生の過程で活性化した脾マクロファージ(いわゆる抑制性マクロファージ)の関与が示唆された.

キーワード
肝部分切除, 同種移植免疫, 抑制性マクロファージ


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