[書誌情報] [全文PDF] (1474KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 91(11): 1710-1714, 1990


原著

肝硬変合併肝癌切除前後におけるグルカゴン投与の血清胆汁酸に及ぼす影響

近畿大学 医学部第2外科(主任:久山 健教授)

須藤 峻章 , 別所 偉光 , 宮本 正章 , 保田 知生 , 内田 隆久 , 河村 正生 , 久山 健

(1989年1月17日受付)

I.内容要旨
肝硬変合併肝癌術後においては,肝機能障害の程度が進行し,肝機能不全への危険性をはらんでいる.ある種の肝機能障害,肝機能不全に対して,インスリン,グルカゴン療法が行われているが,グルカゴン投与の血清胆汁酸に及ぼす影響について検討した.
高度の硬変合併肝癌7名を対象とし,術前術後にグルカゴン1mgを静注し,総胆汁酸,C-AMP,胆汁酸分画を測定した.
グルカゴン負荷試験では,術前C-AMPは前値14±0.8PMo1/mlより漸増し,(p<0.01),30分で362±94PMol/mlと増加した.総胆汁酸値は,28±9μMol/mlより60分で11±3μMol/mlと低下した.術後もグルカゴン負荷後C-AMPは前値13±1PMol/mlより漸増し,30分で192±58PMol/mlと増加し(p<0.01),総胆汁酸とC-AMPの関係をみると,C-AMP 5分の増加率と総胆汁酸の減少率に有意の相関々係を認めた(p<0.01).胆汁酸分画では,術前GCDCA 5.8±2.9ng/mlよりグルカゴン投与60分で1.2±0.4ng/mlと低下し(p<0.05),TCDCAも前値3.2±1.4ng/mlより60分で1.6±0.9ng/mlと低下した.術後もGCDCA前値18±4.3ng/mlよりグルカゴン投与後60分で4.7±1.5ng/mlと低下し(p<0.05),TCDCA前値7.1±2.2ng/mlよりグルカゴン投与後60分で2±0.8ng/mlと低下し(p<0.05),血清胆汁酸に多大な影響を及ぼす事が判明した.

キーワード
高度硬変合併肝癌, グルカゴン, 胆汁酸分画, C-AMP

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。