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日外会誌. 91(10): 1636-1643, 1990


原著

新生児 ECMO (Extracorporeal Membrane Oxygenation) における静脈―動脈灌流に関する実験的並びに臨床的研究

神戸大学 医学部第2外科

沢村 敏郎 , 久野 克也 , 家永 徹也 , 中村 和夫

(1989年10月26日受付)

I.内容要旨
新生児重症呼吸不全に対してECMO(Extracorporeal Membrane Oxygenation)を行って救命した報告が最近増加している.しかし,実際にECMOを施行する場合には,送脱血回路にいくつかの間題があって決して容易ではない.我々は,市販されている透析回路を使用し,一般の病院でも利用できるV-A(静脈一動脈)バイパス回路によるECMO装置を考案した.本装置はsilicon hollow fiber製膜型肺(有効面積0.5平米),ローラーポンプを使用し,熱交換器は回路内に設置せず,代わって空気・酸素ミキサーの混合気を加温し,これを膜型肺に吹送することにより血液を保温した.回路内充填量は150mlであった.
本装置を用いて,実験的に呼吸補助能を検討した.対象は2~4kgの幼犬を用い,全身麻酔下,無呼吸とし,ECMOを施行した.60ml/min/kgの流量ではPaO2は83±15mmHgを示した.
臨床症例は,在胎38週より40週の重症呼吸不全を呈した先天性横隔膜ヘルニア症の4例で,男児が3例,女児が1例であった.体重は2,402g~3,082gであった.全例,脱血カテーテルは右内頸静脈から,右房内に挿入し,送血は右頸動脈から行なった.ECMOにより,全例PaO2は著明に上昇した.ECMO中の最大流量は65~120ml/min/kg,実施時間は81~155時間であった.4例中2例は生存し,残りの2例は頭蓋内出血のためECMOを中断した.ECMO終了時の血しょう遊離ヘモグロビン値を測定したところ7~27mg/dlであった.V-Aバイパスでは低流量の際,酵素加された血液が不均等に分布する場合がある.またECMO中にpersistent fetal circurationに陥ることもあり,ECMO中,および離脱には,下肢の経皮モニターによる酸素飽和度の測定と,脱血の血液ガス分析が必要であった.

キーワード
V-Aバイパス, ECMO, 経皮的酸素飽和度モニター, PFC, 先天性横隔膜ヘルニア


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