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日外会誌. 91(10): 1628-1635, 1990


原著

閉塞性血栓血管炎 (Buerger 病) 病理過程の組織学的性格

*) 大阪市立大学 医学部第1病理
**) 大阪市立大学 医学部第2外科
***) 高津病院 外科

藤本 輝夫*) , 臼井 典彦**) , 柿木 英佑***) , 上道 哲***) , 木下 博明**)

(1989年9月26日受付)

I.内容要旨
今日まで閉塞性血栓血管炎(Buerger病)における動・静脈の病変の記載は見られるが,その際の病理過程の組織学的性格に照らしてその本態が理解されることは,必ずしも満足すべきものであったとはいえない.この点を解明するため,この疾患の9症例の切断肢について病理組織学的検索がなされた.
症例は27歳から47歳にわたる男性9例であり,下肢の切断までの推定罹病期間は3年から11年にわたった.1日の喫煙量は煙草20~80本であった.なお,これらの例には高血圧は見られなかった.ホルマリン水固定のこれらの9例の切断肢から,主として前・後経骨動脈とその随伴静脈について,それらの走向を追って観察し得るようそれぞれ十数個の組織片を切出し,その薄切標本について組織学的に検索された.
その成績を通して,病理過程が次のように展開するものと理解された.まず,下肢の小動脈中膜の過機能(挛縮)の持続・反復に伴って局所に高血圧性小細動脈傷害に見るような小動脈の変化がおき,それが進展することをもって始まる.それは,高血圧の既往のないこれらの患者においても,小動脈中膜の挛縮に伴って局所の動脈系の近位側に圧の上昇がもたらされることとなるためと思われる.次いで,そこに血栓形成による閉塞が生じ,続いてその器質化,再疎通の過程が強く現われる.小動脈の内腔を閉塞する組織からその中・外膜,周囲組織にかけて,さらに灌流域の骨格筋線維の萎縮・壊死化巣にもリンパ球浸潤が目立つようになる.そこに何らかの免疫学的機序の関与が示唆される.さらに,随伴する小静脈壁等にも小動脈におけると類似の閉塞性傷害がおきることが少なくないことも確かめられ,それが局所の血行障害を増強させることも考察された.

キーワード
閉塞性血栓血管炎, Buerger病, 組織学的性格, 挛縮, 免疫学的機序


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