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日外会誌. 91(10): 1623-1627, 1990


原著

胸部大動脈瘤, 胸腹部大動脈瘤における補助手段
―特に腎機能温存の面からの検討―

神戸大学 医学部第2外科
*) 神戸大学 医学部救急部

山下 長司郎 , 中村 和夫 , 岡田 昌義 , 今井 雅尚 , 西川 育志 , 戸部 智 , 小澤 修一*)

(1989年11月6日受付)

I.内容要旨
胸部下行及び胸腹部大動脈瘤手術における補助手段を特に腎機能温存の面から検討した.1979年10月から1989年3月の10年間に当科で手術を行なった胸部大動脈瘤は76例であったが,このうち補助手段を用いて手術を行なった胸部下行及び胸腹部大動脈瘤の25例を対象とした.補助手段として人工血管を用いた一時体外バイパスは9例(人工血管群),Gott tubeを用いた一時体外バイパス5例(Gott群),Bio-Pumpを用いた左心バイパスは11例に行なわれた(Bio-P群).術前の年齢,動脈瘤最大径,腎機能は3群間に差はなかった.人工血管群,Gott群及び,Bio-P群の3群間で術後腎機能に影響すると思われる術中諸因子について検討したところ大動脈遮断時間は各々58±26分,64±18分,64±17分で3群間に差はなかった.大動脈遮断中の上下肢平均動脈圧較差は42±14mmHg,31±7mmHg,9±10mmHgとBio-P群が有意に少なかった.バイパス中の尿量は98±43ml,120±54ml,255±269mlとこれもBio-P群が最も多かった.手術成績は人工血管群9例中3例が死亡したが1例は腎不全であった.Gott群5例に死亡例はなかったが1例が腎不全に陥り透析にて救命した.Bio-P群11例には腎合併症はなくBUN 57,Cr 3.0と高度腎機能障害例でも術後腎不全を併発しなかった.以上の結果より胸部下行,胸腹部大動脈瘤における補助手段としてBio-Pumpを用いた左心バイパスはバイパス流量を調節することができ腎機能保護に対して極めて有用であると考えられた.

キーワード
胸部大動脈瘤, 一時体外バイパス, Bio-Pump, 左心バイパス, 腎機能障害


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