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日外会誌. 91(10): 1524-1533, 1990


原著

マウスにおける adoptive immunochemotherapy による腫瘍退縮メカニズムの解析

岡山大学 医学部第1外科

三宅 規之

(1989年9月26日受付)

I.内容要旨
動物実験のadoptive immunochemotherapyによる腫瘍退縮実験における腫瘍退縮メカニズムはいまだ解明されていない.そこで,BALB/CマウスのMeth A腫瘍退縮実験系に対して,酵素抗体法やhisto in situ hybridization(HISH)法を用いて,退縮腫瘍局所における浸潤単核球やサイトカインの変化を検索した.また,退縮腫瘍胆癌マウスの血清中のサイトカイン活性についても検索した.
浸潤単核球に対する酵素抗体法の結果,adoptive immunochemotherapy直後は浸潤単核球は腫瘍内部に認められたが,腫瘍退縮時には辺縁に移動していた.また,検索した抗Thy1,抗Lyt1,抗Lyt2,抗L3T4,抗asialo GM1,OkIa1の各抗体陽性細胞はともにadoptive immunochemotherapyを施行していないコントロール群に比べて有意に増加していた.しかし,浸潤単核球は腫瘍壊死部と離れており,サイトカイン等の物質を放出して腫瘍を破壊していることが考えられた.
サイトカインDNAプローブを使った退縮腫瘍に対するHISHでは,各サイトカインmRNAともに散在性にごく少数しか認められなかったが,TNF-α,βのmRNAは退縮腫瘍とコントロール腫瘍の両群で認められ,IFN-β,γのmRNAは退縮腫瘍のみで認められた.
血清中のサイトカイン活性に対する検索の結果,TNF-α活性は,腫瘍退縮の間は上昇し,コントロール群より高い傾向にあったが,腫瘍退縮とともに低下した.また,IFN活性は,adoptive immunochemotherapy後,上昇し始め,退縮時には,コントロ一ル群に比べて有意に高かった.
以上の結果より,腫瘍退縮においては,浸潤単核球やサイトカインがそれぞれ異なる働きのもとに抗腫瘍効果を発揮しているものと考えられた.

キーワード
adoptive immunochemotherapy, 酵素抗体法, tumor infiltrating cell (TIL), histo in situ hybridization (HISH), サイトカイン


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